特集

コロッケによるまちづくりの取り組みについて

高岡市 経営企画部 都市経営課


1.はじめに〜きっかけは人口対策!?〜


高岡市の人口推移

高岡市の人口は、1988年(昭和63年)をピークに減少傾向が続いています。高岡市の人口減少で深刻なのは、自然減(出生数が死亡数を下回ること)よりも社会減(転出者が転入者を上回ること)の影響が非常に大きいということです。この減少に歯止めをかけ、市の活性化を図っていくために、雇用や住宅、子育てなどに関する様々な施策が進められていますが、市民全体の活力につながるとして注目したのが、「市のイメージアップ」に関することでした。イメージアップを図ることで、高岡市に愛着がわき、“高岡を離れがたい”気持ちになってくれないものかと考えたのです。



2.「カラーたかおか」の取り組み


高岡市では人口対策の一環として、市役所の若手職員で構成された「イメージアップ作戦プロジェクトチーム」が平成15年に発足しました。平成16年9月には、このプロジェクトをきっかけとして、ホームページ「カラーたかおか」を開設しました。このホームページのコンセプトは、“市民にわかりやすく、平易かつ大胆な表現方法で、市民生活が豊かになる情報を提供すること”です。「カラーたかおか」のメンバー(20名)は、通常はそれぞれ異なった部署で勤務しており、不定期に集まっては高岡に関するネタを探し、調査や取材活動などを行っています。現在に至るまで、ホームページのリニューアルやメンバーの入れ替えをしながら、次のような様々な情報を市内外に発信しています。


1 たかおかサクサクでホクホクキャンペーン!(めざせ!コロッケのまち)
コロッケでまちのイメージアップを図る。
2 たかおか偉人伝 高人記
高岡の歴史上の偉人を紹介するなど高岡の歴史にスポットを当てる。
3 音楽大好き大集合!〜たかおか音楽のカリスマたち〜(市民団体との協働/外部委託)
高岡で活躍する音楽グループやイベントを実施する会場等を紹介する。
4 深夜カラー特急便
特定のテーマによらない、様々な角度から高岡のトピックを紹介する。
5 高岡発!ニッポンブランド
高岡の有名企業・商品、老舗、クラフトマンを紹介する。
6 藤子まんがのルーツたかおか(市民団体との協働/外部委託)
郷土が育んだ漫画家藤子不二雄先生の足跡をたどる。
7 子育てNAVI
高岡での子育てを応援する情報を一元的に提供する。
8 高岡百景
高岡市内のお勧めビューポイントを紹介する。

カラーたかおかトップページ


3.コロッケとの関わり


この活動の中で、コロッケを取りあげた発想はいたって単純です。総務省統計局の「家計調査報告(県庁所在市調べ)」において、富山市は平成12年に1世帯あたりのコロッケ購入額が日本一に輝いて以降、2位、5位と順位を下げてきていました。そこで、「コロッケの消費を増やすため、高岡から盛り上げようじゃないか」という意見があがり、「カラーたかおか」内のコンテンツ「たかおかサクサクでホクホクキャンペーン」として始まりました。ちなみに、北陸の県庁所在市3市がこのコロッケ購入額ランキング上位の常連都市となっており、はっきりとしたことはわかりませんが、次のような共通の要因によるものかもしれません。


・共働き率が高い(時間のかかる揚げ物がなかなかできないため、外で購入するのでは?)
・持ち家率が高い(家を大事にするあまり、家で揚げ物料理をすることを倦厭してしまうのでは?)
・北前船による交易(北海道に移住した県人が多いことが関係している(じゃがいも)?)


1世帯あたりのコロッケ購入額ランキングの推移


4.活動の拡がり〜仮想から現実へ〜


「カラーたかおか」でのコロッケ取材は、市内でコロッケを売っているお店の方に話を聞き、実食調査を行ってホームページで紹介するというシンプルなものですが、親しみやすく手軽に食べられるコロッケということが手伝ったのか、面白いことをしている市職員がいると思ってもらえたのか、予想以上の反響をいただきました。マスコミの方々にも数多く取り上げていただいたことで飛躍的に知名度が向上し、その結果として多くの方々の賛同を得ることができ、さらに大きな拡がりをみせていきました。

日本海高岡なべ祭りコロッケ屋台の様子

平成17年の日本海高岡なべ祭りでは、食肉組合等の協力を得て、初めてコロッケ屋台(2店舗)を出店しました。祭りが行われた1月8・9日は両日とも非常に寒く、客足も心配されましたが、行列ができるほどの盛況ぶりで4,700個を売り上げることができました。

コロッケ屋台の出店と同時に、「カラーたかおか」のホームページアドレスを書いた名刺配布や、パソコンでのデモンストレーションなどで市民の方々に活動を直接PRすることができ、その後のアクセス増につながるなど大変意味のある2日間になったと思います。

翌年、平成18年の日本海高岡なべ祭りには、飲食店、精肉店等12店舗が自慢のコロッケで屋台を出店し、いろいろなコロッケを食べ比べできるかたちになりました。2日間で15,500個を売り上げ、完売する屋台が出るなど、着実にコロッケ人気は高まっていると実感しました。同年6月には、商工関係・飲食関連団体、新聞社、行政等が中心となって、「高岡コロッケ実行委員会」が発足し、コロッケによるまちづくりを目指してより具体的な取り組みが行われています。実行委員会は、市内だけに留まらず、金沢や名古屋など県外でのPRや、コロッケによる町おこしの先進地である茨城県龍ヶ崎市との交流など、広範な活動を展開しています。


食の祭典in龍ヶ崎

そして、今年の日本海高岡なべ祭りで設けられたコロッケ横丁には、昨年にも増して多くの方々が訪れました。新しい企画として、「コロ助と行こう!コロッケスタンプラリー」と題し、藤子・F・不二雄先生の作品「キテレツ大百科」に登場する「コロ助」を印刷した台紙を用いたスタンプラリーを開催しました。コロッケの売り上げは2日間で21,300個、コロッケスタンプラリーにも2,100人の方々に参加していただき、鍋との相乗効果で“寒くても熱い高岡”を印象付けることになったと思います。

日本海なべ祭りコロッケ横丁の様子

他にも、コロッケによるまちづくりには、高岡を盛り上げたいと多くの企業が名乗りを挙げ、オリジナルコロッケの開発や様々な商品の企画が実現しています。市内にある精肉店やスーパーからは、「コロッケ目当てに来るお客さんが増えたのでいろいろ工夫している」という声が聞こえたり、飲食店でも各店のオリジナルコロッケをメニューに加えたりと、様々な方面に良い影響をもたらしていますが、行政主導ではなく、こういった市民主体の盛り上がりこそが高岡の活性化につながると考えています。

また、市としては、平成19年6月から、高岡産のほうれん草を混ぜ込んだコロッケ給食を市内保育園で行うなど、地産地消・食育の観点から取り組みを始めています。使用する食材を工夫することで、子供たちの心に残る給食となって欲しいと思います。


ほうれん草を混ぜ込んだ「ポパイコロッケ」定食


5.おわりに


コロッケによるまちづくりは、とても単純ですが面白い発想が元となってここまで拡がってきました。多くの市民の皆さんが高岡を活気づけたいと考えている証拠だと思います。この取り組みは、始まってからまだ数年しか経っていません。これからも、イメージ先行で終わらずに市民の皆さんの中に定着していくことを期待し、行政としても高岡を盛り上げていきたいと思います。

とやま経済月報
平成19年11月号