特集
■平成17年国勢調査の集計結果等からみる富山県の高齢化
■平成16年度県民経済計算推計結果にみる県内経済

平成17年国勢調査の集計結果等からみる富山県の高齢化

砂防課(前 統計調査課) 舟本 和彦


1.はじめに


国勢調査は、わが国の人口の状況を明らかにすることを目的に、大正9年以来5年周期(昭和22年臨時国勢調査を除く)で実施され、このほど平成17年国勢調査の第1次・第2次基本集計結果が公表された。

今日、少子高齢化の進行、生産年齢人口の減少など人口構造の変化に伴う諸問題が顕在化している中、国民生活の質の向上が課題となっている。

このため、5年ごとの国勢調査の結果と、将来推計については国立社会保障・人口問題研究所の統計資料に基づき、富山県の高齢化の特色と将来予想について考えてみたい。

※表・グラフについては、出典の記載がない場合、国勢調査から作成。


2.人口の推移と高齢化の進展


(1)総人口の推移 … 総人口は減少時代を迎える

本県の総人口は、第1回国勢調査のあった大正9年から昭和15年までは毎回約3%ずつ増加し、「第1次ベビーブーム(昭和22〜24年)」を経て、昭和25年には100万人を超えた。その後、「第2次ベビーブーム(昭和46〜49年)」を迎え、昭和50年に4.0%の高い増加を記録し、昭和55年には110万人を超え、平成7年まで増加を続け1,123千人に達したが、平成12年には△0.2%、平成17年には△0.8%と減少が続き1,112千人となっている。




(2)

年少(15歳未満)・老年(65歳以上)人口の推移 … 老年人口が急激に増加

年少人口は、大正9年には290,997人(40.2%)であったが、「第1次ベビーブーム」後の昭和25年には361,557人(35.8%)となった。その後、「第2次ベビーブーム」後の昭和50、55年に一時的に増加したが、以後、減少が続き、平成7年には170,045人(15.1%)となり、老年人口201,320人(17.9%)を初めて下回り、平成17年には総人口に占める割合が調査開始以来最も低い13.5%となった。

また、老年人口は、大正9年には39,790人(5.5%)であったが、昭和10年以後増加し、昭和50年には101,265人と初めて10万人を、平成7年には20万人を突破し、平成17年には258,317人となり、総人口に占める割合が調査開始以来最も高い23.2%となった。

ちなみに、平均寿命は、昭和25年は男性55.47歳、女性57.46歳、昭和50年には男性71.11歳、女性76.56歳、平成12年には男性78.03歳、女性85.24歳となっている。



(3)

将来の推計人口 … 全国を上回るスピードで人口の減少と高齢化が急速に進行

平成12年国勢調査に基づく国立社会保障・人口問題研究所の「都道府県別将来推計人口(平成14年3月推計)」では、今後、富山県の総人口は全国を上回るスピードで減少を続け、平成27年には107万人(全国12,627万人)、平成37年には99.4万人(同12,114万人)となり、100万人を下回ると推計されている。

一方、老年人口は、平成27年には30万人を超え316千人・老年人口割合29.5%(全国26.0%)となり、平成32年の324千人(31.3%)をピークにその後減少はするものの、老年人口割合は上昇を続け、平成37年には31.9%(28.7%)となり「約3人に1人が65歳以上」になると推計されている。

つまり、富山県の高齢化は、平成17年では全国より約5年早く進んでいたが、平成27年にはその差が約10年に広がることが予想される。




(4)いわゆる「団塊の世代」 … 「団塊の世代」の比率は全国第1位

第1次ベビーブームに生まれたいわゆる「団塊の世代」(1947〜1949年生)は、平成17年では67千人(※)で総人口の6.1%(全国第1位、全国は5.3%)を占め、人口構造に大きな影響を与えている。

「団塊の世代」が、全て15歳以上となった昭和40年には、生産年齢人口は初めて70万人を超え、総人口の約7割(69.2%)を占めるようになった。以後は、60%台で減少傾向で推移し、平成17年には63.2%となり、今後さらに減少が続くと予想される。そして平成27年にはこの「団塊の世代」の67千人は老年人口に含まれることになる。

※平成17年国勢調査時点で56〜58歳の人口の合計数値であり、1947〜1949年うまれの者とは必ずしも一致しない。

(5)

高齢者1人あたりの生産年齢人口 … 全国と比べてかなり低い数値

ここで、生産年齢人口と老年人口の関係について考察してみたい。ここでは

1 一般的に、統計で用いる生産年齢人口は「15歳〜64歳」であるが、就業の実態に合わせる。
2 本県の大学・短大等の進学率は51.4%(平成18年)であり生産活動に従事する年齢を18歳と22歳の中間である20歳としたほうが適当と考える。(国民年金保険料の負担義務も20歳から生じる。)
3 65歳以上の就業者、64歳以下の未就業者もいるが、ここでは一律に考える。

などの理由から「20歳〜64歳人口」を生産年齢人口として試算してみた。

なお、平成17年に「団塊の世代」は56歳から58歳だが、10年後の平成27年には全て65歳以上となり老年人口に含まれる。



この試算結果によると、高齢者1人あたりの生産年齢人口は平成17年の2.52人(全国3.02人)が、平成27年には1.82人(全国2.18人)に減少する。ちなみに石川県、福井県は、平成17年にはそれぞれ2.85人、2.54人、平成27年には2.02人、1.99人となり、富山県は0.2人程度下回るものと予想される。

また、「団塊の世代」は第2次産業を中心とする本県産業の中枢で活躍してきたが、その大量退職・退職時期が短期に集中することから、労働力や技能の喪失等の影響が他県よりも大きいことが予想される。



3.

高齢者(65歳以上)親族のいる一般世帯(以下「高齢者のいる世帯」という)の構成


富山県の世帯の特色として、平成17年の一般世帯(病院・施設等の入所者を除く世帯)1世帯当たりの人数は2.93人(全国第4位、全国は2.55人)と多く、また、いわゆる「3世代同居世帯」の割合でも19.0%(全国第5位、全国は8.6%)と高くなっており、核家族化が進行する今日にあっても、全国と比較して「家族の結びつきが強い地域社会」であると言える。

以下では高齢者のいる世帯についてみてみる。


(1)

高齢者のいる世帯の状況 … 高齢者のいる世帯の割合は全国第7位と高い

高齢者のいる世帯の割合は、平成7年には41.3%(全国29.1%)であったが、平成17年には45.3%(全国第7位、全国35.1%)と全国との差は縮小したものの世帯割合は上昇しており、今後も増加が続くものと予想される。



(2)

高齢者のいる世帯の家族構成 … ひとり暮らしや夫婦のみの世帯割合は極めて低い

図3・表4で「高齢者のいる世帯」の家族構成についてみると、割合が最も高いのは「3世代同居世帯」で、平成12年の43.4%(全国26.8%)から平成17年には36.2%(全国21.2%)と減少したものの、依然高い水準を維持している。

また、平成7年には「ひとり暮らし世帯」の割合は10.4%(全国17.2%)、平成17年には15.0%(22.5%)と増加した。また「夫婦のみの世帯」は平成7年には16.4%(23.8%)、平成17年には21.3%(27.8%)と増加しており、全国と比べて割合は低いものの今後も増加が続くものと予想される。

なお、「家族の結びつきの強い」富山県にあっても、「3世代同居世帯」の割合は減少しており、中でも高齢者のいる「3世代同居世帯」の減少が特に大きく、今後もその傾向が続くものと予想される。

一般世帯以外の病院や老人ホーム等の施設に入所している高齢者は、平成7年の10,180人(高齢者の5.0%)から平成17年には17,501人(6.8%)と同様に増加している。






(3)

高齢者世帯の将来推計 … ひとり暮らしや夫婦のみの世帯割合が急速に増加

表5の家族類型別世帯数の推移をみると今後、富山県の高齢者世帯は増加を続け、中でも、「ひとり暮らし世帯」は平成17年の25,255世帯(20.9%)から平成37年には44,892世帯(29.8%)に、「夫婦のみの世帯」は35,272世帯(29.2%)から45,907世帯(30.5%)となり、高齢者世帯全体の60%を超えると推計されている。


※表をクリックすると大きく表示されます。


4.高齢者の就業状況


(1)

高齢者の就業状況の推移 … 農業が最も多く、女性の就業率が大幅に増加

高齢者の就業者は、平成12年には54,175人(就業率23.3%)であった。平成17年には56,547人(22.0%)と人数は増加したが、就業率は減少した。これは、高齢者人口の増加が就業者の増加を上回ったためである。

これを男女別にみると、男性は667人(2.0%)増加し、就業率は33.0%に、女性は1,695人(8.3%)増加し、就業率は14.5%となった。



次に、平成17年の就業状態を産業別にみると、農業が14,748人(26.1%)と最も多く、次いで、卸売・小売業の10,375人(18.3%)となっている。

また、農業就業者に占める高齢者の割合は64.0%、漁業が32.2%、林業が31.9%と、全国と比べても第1次産業で高くなっている。これは兼業農家等で、定年退職を機に農業に専従することなどが要因として考えられる。






(2)

「団塊の世代」の就業予測 … 新規産業や高齢者に優しい就業環境の整備が必要

前述したように「団塊の世代」が第一線を退き高齢者となる平成27年には、老年人口は316千人になると推計されている。高齢者の就業率を平成17年水準の20%と仮定すると、就業者数は63千人と予想され、平成17年の高齢者の就業者は57千人であることから、その差約6千人分の雇用を新たに確保することが必要になると考えられる。



5.おわりに


これまで見てきたように、本県の総人口はわずかながらも減少傾向にあり、かつ年少人口及び生産年齢人口が減少し、老年人口の増加が加速する傾向にあることから、経済・社会への影響が懸念される。

すなわち、本県では、高齢者のいる世帯のうちひとり暮らし世帯や夫婦のみの世帯等が徐々に増加し、子供夫婦や孫と同居する高齢者の世帯が急速に減少しつつあるなど、高齢者を取り巻く家庭環境も大きく変わりつつあるといえる。この点については、高齢化が急速に進む中にあって、高齢者が健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で安心して暮らせるようにするためには、地域のコミュニティの維持はもとより、社会を構成する「家族」のつながりに期待することが大きい。

さらに、高齢者1人あたりの生産年齢人口の減少が本県はもとより全国的な課題となることから、年金を受給する側と支える側の人口比率のバランスも懸念される。また、高齢者の就業率が低下傾向にあるなど、高齢者の経済的自立に影響が生じることが予想される。

こうした中にあっては、高齢者や女性にやさしい就業環境の整備など、「団塊の世代」が長年培ってきた技術・知識を活かし、意欲のある限り働き続けることができる環境等を整備すること、そして、元気な高齢者が自ら社会を支える仕組みづくりが求められる。


なお、本文に用いた将来推計は平成12年国勢調査に基づくものであり、現状と乖離している部分もある。今後、平成17年国勢調査を踏まえた新たな将来推計が公表されることとなっており、これに基づき新たな検証を行っていきたい。

とやま経済月報
平成19年4月号