特集

富山県の最近の雇用失業情勢について

厚生労働省 富山労働局 職業安定部職業安定課


はじめに


雇用失業情勢は、景気の回復とともに改善が続いているところですが、就業形態の多様化が進んでおり、パート・アルバイト、契約社員・派遣社員等の非正規の職員の増加もみられ、労働環境の整備が必要とされるところです。

本稿では、富山県及び全国の完全失業率や求人・求職の動向について説明するとともに、雇用対策などの取り組みについて紹介します。

  ※ 完全失業率などの用語の定義は、文末にあります。
  ※ 文中のグラフは、全国・北陸等の表示がない場合、富山県のデータです。

1 完全失業率の動向


総務省の労働力調査によると、平成18年8月の全国の完全失業率は4.1%(季節調整値)となっており、完全失業者数は272万人で、うち非自発的離職者は9ヶ月連続減少し、自発的離職者も5ヶ月連続で減少するなど改善の動きが見られるところです。

また、富山県の平成18年4月〜6月の完全失業率は2.8%(モデル推計値)で、平成15年4月〜6月の4.1%をピークとして減少が続いており、県別の完全失業率では福井県の2.4%について二番目に低い状況です。(2.8%は富山、愛知、三重、滋賀、石川の5県)


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2 有効求人倍率の動向


富山県の有効求人倍率の推移を年度別にみると、平成2年度のバブル期では2.22倍の高率でありましたが、以降低下を続け、第二次平成不況により、平成11年度は0.59倍の厳しい状況となりました。その後企業の再構築(リストラクチャリング)が進み、景気の回復とともに、平成16年6月に有効求人倍率は1.01倍となり、16年度は1.06倍、17年度は1.17倍と順調に回復しています。


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3 労働力需要の動向


平成17年度の求人数(年度平均)は、新規求人数8,334人、有効求人数22,116人で、対前年度比では、それぞれ4.5%、6.6%と増加しています。

また、平成17年度の求職者数(年度平均)は、新規求職申込件数5,069件、有効求職者数18,870人で、対前年度比では、新規求職申込件数は0.5%の微増となり、有効求職者数は3.9%の減少となっています。

平成18年8月の労働市場の動向は、新規求人数は8,513人で、前年同月より4.7%増加となり、新規求職申込件数は4,412件で、前年同月より2.6%減少となっています。また、有効求人数は22,950人で、前年同月より6.2%増加となり、有効求職数は18,003人で、前年同月より2.7%減少となっています。

このように有効求人数は、安定した動きを示すとともに、有効求職者数は減少で推移しており、雇用情勢は全体として改善しています。


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ア 新規求人数の産業別の動向

新規求人数を産業別にみると、16年度は金融・保険業で、保険業のコールセンターの企業進出があり、伸び率が一番大きくなっています。また、17年度は、どの産業においても16年度より伸び率は鈍化しているものの、相対的には増加しており、特に運輸業での伸び率が大きくなっています。また、製造業では、企業での設備投資が拡大しており、16年度では一般機械器具で、17年度では化学工業での伸び率が大きくなっています。また、18年度に入ってからは、製造業での派遣契約期間の緩和もあり、その他の事業サービス業での増加や、医療報酬制度の改正の影響から医療・福祉での増加が著しく、18年8月では、医療・福祉・サービス業は、新規求人数の三割を占める状況となっています。








イ 新規求人数の雇用形態別の動向

新規求人数を雇用形態別に見ると、正社員求人、派遣求人は増加基調で推移し、契約社員、パート求人は横ばいの状態となっています。特に派遣求人の増加が著しく、18年8月では全数の9.2%を占め、16年度の4倍となっています。


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ウ 新規求職者の年齢別・実態別の動向

新規求職者(常用)について、年齢別に人数の伸び率をみると、35歳未満の新規求職者が16年度の25,787人から17年度の26,211人と1.6%の増加となりましたが、55歳以上の新規求職者は12,427人から11,818人と4.9%の減少となっています。また、18年8月では、25歳〜34歳の年齢別割合は31.9%と最も大きく、次いで35歳〜44歳、55歳以上の順に大きくなっています。

新規求職を実態別にみると、17年度は自己都合離職者、在職者で増加し、事業主都合離職者、定年退職者、無業者で減少となっています。また、18年8月では在職者が26.3%と四分の一を占める状況となっています。景気の回復の影響から、求職者はより良い労働条件への転職の意欲が旺盛となっており、在職中の求職登録が増加し、また、企業整備の減少から、事業主の都合などの非自発的離職者は減少しています。特に高年齢者では、高年齢者の雇用確保措置の導入や、年齢不問求人の増加などの雇用環境の改善が進み、新規求職者は減少となっています。






エ 職種別・雇用形態別の有効求人・有効求職・有効求人倍率の動向

平成18年8月の有効な求人数・求職者数・求人倍率を職種別に17年8月と比較すると、一般常用の職種別の求人倍率は、販売の職業以外で上昇しているものの、管理的職業、事務的職業、農林漁業の職業で、1倍を下回っており、特に事務的職業は0.36倍で、就職環境は厳しい状況となっています。一方、生産工程労務の職業では、求人数は846人増加し求職者は286人減少しており、求人倍率も1.53倍になるなど改善が進んでいます。

また、パート常用の職種別求人倍率は、管理的職業、販売の職業、運輸・通信の職業以外は上昇しているものの、管理的職業、事務的職業で1倍を下回っており、事務的職業は0.69倍となっています。有効求人数は、専門的・技術的職業、事務的職業で大きく増加していますが、同様に求職者も増加しており、求人の増加に伴う求職者の増加や、家事・育児の両立を希望する求職者の増加と考えられます。

このように、職種別での求人と求職のミスマッチが生じており、特に専門的・技術的職業(看護師、薬剤師、SEなど)では、職種転換は難しく、人手不足の状況となっているところです。






オ 正社員の有効求人倍率の動向

正社員の有効求人倍率とは、有効求人数を雇用形態別(正社員、契約社員、パート、派遣、臨時)に把握し、正社員を希望する求職者一人当たりの求人数を表した数字であり、正社員を希望する求職者は、短時間以外の常用就労を希望する求職者としています。


正社員の有効求人倍率=正社員の有効求人数/パートを除く有効求職者数(常用)
※派遣を希望する者や契約社員を希望する者もパートを除く有効求職者数(常用)に含まれるため、厳密な意味での正社員有効求人倍率より低い値となる。

平成18年8月の正社員の有効求人倍率は、0.80倍となり、前年同月比で0.04ポイントの増加となっています。また、全国の正社員の有効求人倍率は0.62倍で、富山県は5番目に高い倍率となっていますが、1倍を下回っており、正社員を希望する求職者にとっては、まだ厳しさも見受けられるところです。


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4 具体的な雇用対策の実施


雇用情勢は、緩やかな改善の動きが続いていますが、依然として、求人、求職間に職種、雇用形態、能力、年齢、賃金等によるミスマッチが存在しているところです。このため、公共職業安定所においては、地域の労働市場の状況や求人者・求職者のニーズを踏まえつつ就職目標率を設定し、下記の事項を重点的に取り組んでいます。

求職者に対しては、早期の再就職を促進するため、担当制による相談体制を導入し、職業相談を通じて求職者個々のニーズや状況の変化を十分に把握し、適切な職業紹介、就職支援を実施しています。
求人者に対しては、求人受理時の労働条件の確認の徹底や、充足に向けての助言指導を実施しています。特に、求職者の多くが正社員としての就職を希望していることを踏まえ、雇用形態が正規労働者(正社員)である求人の確保やその充足率の向上に努めています。


おわりに


人口が減少へと転じ、労働供給制約が強まる社会において、労働者が、その持てる能力を十分発揮し、高い労働生産性を実現するため、就業率を高めることが重要な課題となっています。また、就業形態が多様化し、働き方の違いにより賃金格差が固定化しないよう、労働者のキャリア形成支援に向けた取り組みを充実させていくことが必要となっています。

富山労働局では、一人一人の求職者の方が、個性を生かし意欲をもって働くことができるよう、職業能力開発機関や関係機関と連携し、就職支援に取り組むこととしています。



○ 用語の定義


1.労働力調査

総務省統計局が実施している調査で、就労・不就労の実態を明らかにして、雇用政策等各種行政施策に活用している。



2.有効求人倍率

月間有効求人数/月間有効求職者数×100(%)【求職者一人あたりの求人数を表す】


3.新規求人数

期間中に富山労働局内の安定所で新たに受け付けた求人数。(採用予定人員)


4.月間有効求人数

 「前月から繰り越された有効求人数」と当月の「新規求人数」の合計数。
「前月から繰り越された有効求人数」とは前月末日現在において、求人票の有効期限が翌月以降にまたがっている未充足の求人数。
(求人票の有効期限は受理月の翌々月の末日)


5.新規求職申込件数

期間中に富山労働局内の安定所で新たに受け付けた求職申し込みの件数。


6.月間有効求職者数

「前月から繰り越された有効求職者数」と当月の「新規求職申込件数」の合計数。
「前月から繰り越された有効求職者数」とは前月末日現在において、求職票の有効期限が翌月以降にまたがっている就職未決定の求職者の数。
(求職票の有効期限は受理月の翌々月の末日であるが、職業相談を実施した場合は、その翌月が有効期限となる。)




とやま経済月報
平成18年11月号