特集

平成15年度県民経済計算推計結果にみる県内経済

統計調査課 樋口 晃


はじめに


平成15年度の日本経済は、アメリカ経済をはじめとする海外経済の復調に伴う輸出の増加、企業の設備投資の増加などにより、景気回復の足取りが一段と着実さを増した。このような中、富山県経済においても、主力である製造業が大きく伸びたことなどにより、実質成長率で3.9%増となり全国の成長率(3.2%増)を上回り、北陸3県でも1位となった。(図1)

また、18年3月に内閣府が公表した「平成15年度の県民経済計算について」によれば、平成15年度の富山県の1人当たり県民所得(3,024千円)は全国9位、対前年度伸び率(3.5%増)は全国2位となった。

本稿では、平成15年度県内経済が好調であった背景を分析するとともに、平成16年度以降の富山県の経済成長率について、各種統計資料などを基に主力である製造業を中心に展望してみたい。(なお、1人当たり県民所得については、留意してほしい点がいくつかあり、第3節を参照願いたい。)



図1 経済成長率(実質)の推移


1 平成15年度富山県経済が好調であった要因


表1は、富山県・石川県・福井県及び全国の産業別総生産の比較であり、図2は富山県の経済成長率の産業別寄与度を表したものである。これらから、平成15年度富山県経済が好調であった要因として、以下の2点が考えられる。


(1)構成比で3割を超える製造業が大きく伸びたこと。
(2)第三次産業においても、卸売・小売業など一部業種で減少があったものの、第三次産業全体としてはプラスに転じたこと。(H14年度は▲0.5)


寄与度
各項目の変化が全体の変化にどれだけの影響を与えているかを示す指標で、14年度から15年度への変化については、次の式により求められる。
寄与度(%)=項目別増減値(H15年度値−H14年度値)÷H14年度合計値×100


表1 北陸3県と富山県の産業別県内総生産 (表をクリックで拡大)


図2 経済成長率の産業別寄与度(名目)


製造業について、平成15年度及び最近の特徴を表2に基づいて隣県である石川県とともに記述してみたい。

平成15年度の富山県製造業は、金属製品など全13業種中7業種でマイナスとなったものの、医薬品が好調であった化学工業が大きく増加に転じたことや、デジタル家電向けの集積回路が好調であった電気機械が増加したことなどから6.3%増となった。また、従来の金属製品に代わって、富山県の製造業を引っ張っている電気機械は、平成14年度に構成比でも1位となり、本県の主力業種となるまで成長を遂げている。(図3)

一方、石川県における平成15年度製造業は、一般機械、電気機械等で若干の伸びがみられたものの、主力である食料品をはじめ8業種で対前年度比マイナスとなったため、全体ではほぼ横バイの0.2%増にとどまった。石川県においても、従来主力であった一般機械が平成14年度に大きく減少(▲23.6%)に転じ、それに代わり電気機械等が伸びてはいるものの、一般機械のマイナス分をカバーするまでには至っておらず、製造業全体の生産額を押し下げる要因ともなっており、今後の回復が待たれるところである。



表2 平成14年度及び平成15年度製造業中分類(名目)の比較 (表をクリックで拡大)


図3 富山県製造業の中分類別総生産上位5項目の推移(名目)


第三次産業について、富山県、石川県ともにサービス業が「医療・保健衛生、介護」の増加、金融・保険業が保険業の増加によりプラスになった。

減少した業種をみてみると、富山県では、卸売・小売業、運輸・通信業で減少となったものの、減少幅は比較的小さいものとなり、この結果、第三次産業全体でみるとプラスになった。

一方、石川県においては、電気・ガス・水道業において、志賀原子力発電所1号機が定期検査のため長期間稼動しなかったことから▲14.2%と大きく落ち込んだことが大きな要因となり、第三次産業全体でマイナスとなった。石川県における電気・ガス・水道の減少は、建設業の減少と並び生産額全体を押し下げる要因ともなった。



2 平成16年度以降の富山県経済成長率の見通し


前節で示したとおり、富山県は全生産額に占める製造業の割合が32.0%と非常に高く(平成15年度は全国8位)、県内経済に大きな影響を与えている。平成15年度の富山県の経済成長率は、好調な製造業を背景に高い伸びを示したが、平成16年度以降の経済成長率等がどのように推移するか、公表されている各種統計資料等に基づいて考えてみたい。

平成16年・17年の富山県製造業を生産面(富山県鉱工業生産指数)から見てみると、一般機械が大きく伸びていることや、化学工業が比較的堅調に推移していることなどから、全体でも引き続き好調を維持している。(図4)(平成17年10月には、デジタル家電用のシステムLSI工場が稼動し、デジタル家電の生産額が今後とも好調を維持するとなれば、製造業全体としても引き続き好調を維持する要因となるものと思われる。)

また、「2005・2006年度富山県設備投資動向調査」(日本政策投資銀行富山事務所)によると2004年度(平成16年度)の製造業の設備投資実績は対前年度比26.6%増、2005年度(17年度)の計画では35.6%増と大幅な増加になっており、積極的な設備投資が行われたことがうかがえる。

一方で、従来から富山県製造業を牽引してきた金属製品は減少を続け、平成16年には製造品出荷額・付加価値額の双方で化学工業にも抜かれ(平成16年工業統計速報)、今後の落込みが製造業全体の生産額を押し下げることが懸念される。富山県の製造業がより活性化し、安定したものとなるためには、好調な電子部品、化学工業だけでなく、金属製品の回復が待たれるところであり今後の動向を注視していかねばならない。

なお、第3次産業の動向については、16年度以降の各種統計資料等が現時点で入手出来ないため、一概に判断することは出来ないが、平成15年から平成16年の国内総生産のうち、第3次産業の動きをみると、若干ではあるが伸びていることなどから、今後も底堅く推移していくものと思われる。

これらから、製造業の一部業種に不安材料があるものの、他の業種、他産業が落ち込みをカバーしていくものと思われ、16年度以降の富山県の経済成長率は、比較的堅調に推移していくものと思われる。


図4 富山県の生産指数の推移(平成12年=100)


3 1人あたり県民所得について


県民経済計算では、「県民所得」とは、雇用者報酬・財産所得・企業所得を合計したものであり、各県の経済全体の所得水準を表しているものである。(図5)

「1人当たり県民所得」とは、県民所得をその県の総人口で除したものである。

県民経済計算の結果が公表されると、1人当たり県民所得(特にその全国順位)が注目されがちであるが、留意しなければならない点がいくつかあり、本節で述べたい。



(1) 「1人当たり県民所得」は、個人の所得水準を表したものではない

「1人当たり県民所得」とあるので、個人の所得水準を想像し、1人当たり県民所得が高ければ、あたかも所得水準が高いように連想しがちであるが、県民所得には、雇用者報酬(注)だけでなく、企業所得、財産所得も含まれることから、必ずしも個人の給与所得と連動するものではない。

平成15年度の富山県の県民所得は、雇用者報酬も確かに伸びたが、企業所得の伸びが大きく寄与し、1人当たり県民所得を押し上げたということができる。(表3)

(注) 県民経済計算の「雇用者報酬」は、所得税、社会保険料雇用者負担等控除前であることや、健康保険・厚生年金等の社会保障基金への雇主の負担金(雇主の強制的現実社会負担)、退職一時金・公務災害補償費(雇主の帰属社会負担)などが含まれているため、通常の給与所得と概念が異なることに注意しなければならない。

なお、個人の収入を示す統計としては、総務省の全国消費実態調査があり、勤労者1世帯あたりの年間収入などを調査・公表している。


表3 平成15年度県民所得


(2) 人口の影響を受けること

1人当たり県民所得は、県民所得を総人口(=未就業人口を含む)で割るため、人口の影響を受けること。例えば、富山県と石川県を比較してみると、経済規模を示す県内総生産や県民所得はほぼ変わらないものの、総人口で石川県が富山県を約63,000人上回るため、1人当たり県民所得は、石川県が富山県より、171,000円低くなっている。(表4)


(3) 県民の就業地の影響を受けること

県内総生産は、県内で新たに生み出された付加価値等を把握する「属地主義」によってとらえたものであるが、県民所得は、「県内居住者」が県内か県外かを問わず、たずさわった生産活動によって得た所得を把握する「属人主義」でとらえたものであるため、県民の就業地の影響を大きく受けること。

例えば、平成15年度の埼玉県の県民所得は、県内総生産よりも大きくなっている。これは、東京都内で働く人の割合(埼玉都民)が多く雇用者報酬の流入が多いためだろう。


表4 県内総生産等の比較


図5 県民経済計算の概念と相互関連図
次の図は、平成15年度県民経済計算推計結果によって県民経済計算の概念とその相互関係を表したものです。


4 おわりに


県民経済計算における推計結果の公表は、各種統計資料の公表時期の関係等から、推計対象年度から1年半〜2年遅れとなっており、現在の経済状況の把握や将来の経済状況等を予想する上での指標にならないとの批判があるのも事実である。

しかしながら、県民経済計算の推計は、県民の経済活動の諸側面を膨大な統計を使用して、県民経済計算の概念に従って加工、組み立てて作成されており、推計結果は地域経済全体を表している唯一の指標である。時系列での分析、他県との比較などを通じて、経済実績の評価、県の経済の特徴等を把握し、各種施策を立案する際に利用することも出来る。

県民経済計算の推計結果が、これまで以上にさまざまな分野で広く利用されることを期待して本稿の締めくくりとしたい。



推計結果の詳しいデータはこちらから見ることができます。
平成15年度 富山県民経済計算の概要
内閣府ホームページ

富山県鉱鉱業指数
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/iip/_news/toukeihyo/toukeihyo.htm

平成16年工業統計速報
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/kogyo/sok16/dat/hyo3.xls
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/kogyo/sok16/dat/hyo4.xls

全国消費実態調査
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/zensyo/index.html


とやま経済月報
平成18年6月号7302