特集

ゴミゼロ社会を目指して
〜富山大学生活協同組合の取り組み〜

富山大学生活協同組合 前専務理事 清水 文清


はじめに


皆さんご存知のように富山大学は、平成17年10月に旧3大学が統合し、新たに新富山大学としてスタートしました。日本海側有数の8学部の総合大学としてスタートした新富山大学には、9千人を超える学生・院生が学んでおり、約7割が県外から富山に来てアパート・マンション暮らしをしています。富山大学生活協同組合(以下、「生協」)は、学生・院生・教職員が出資・利用・運営する協同組合で、協同互助の精神により、組合員の生活の文化的経済的改善・向上を図ることを目的としています。事業活動としては、大学で学ぶ学生・院生の勉学・研究や日常生活のサポート、教職員の方々へのサービスの提供が主要な柱となっていますが、それ以外にも、学生・院生の多くの参加を得て、環境問題をはじめとする様々な関心事や問題意識について話し合い、取り組みを進めています。

今回は、ゴミ問題や環境問題への取り組みを通じて、環境に優しくゴミゼロの社会を目指す環境活動について紹介したいと思います。その中でも、最近チャレンジし、注目を集めた「マイカップ自動販売機」と学生と地域住民の参加による「再発見!わたしたちの街」という大学周辺の清掃活動を中心に報告します。



1 環境問題から自動販売機を考える!


私達の日常生活の中で、「あるのがあたりまえ」の存在になっているのが各種の自動販売機です。その中でも飲料の自動販売機については、若者を中心として大変多くの人が利用しています。飲料の自動販売機は、この場所に必要なのかとさえ思える場所にも設置されており、利用が少ない時間や明るい日中でも商品や機械を明るく照らしています。これらのことから考えて自動販売機は、利用者にとっては便利ですが、環境問題という視点から見ると、環境負荷の大きい販売方法であるとも言えます。

生協でも大学内に36台の自動販売機を設置していますが、この販売方法については以前よりゴミ問題等で、様々な賛否両論の意見がありました。特に近年は、環境問題という点での批判的ご意見も出されるようになり、利用者の利便性と環境対策について両方が成り立つ方法がないか検討を進めてきました。生協の取り組みの経緯と現時点で実施している対応は、以下の通りです。



(1)

自動販売機から出るゴミの分別と回収の徹底

(2)

紙カップ式飲料自動販売機の紙カップリサイクル制度の導入

マイカップ自動販売機

平成13年10月1日より実施。導入以前は、紙カップを燃えるゴミとして回収していました。紙カップの自動販売機での販売量は年間約50,000杯あり、使用済み紙カップを可燃物ゴミとして出すのではなく、リサイクル出来ないかと考え、デポジット方式(*)による回収を提案しました。この提案は利用者に大きな反響を呼び、回収率は現在でも約7割を維持しています。


(*)デポジット方式 商品に容器などの料金を上乗せし、容器などの返却時に上乗せしていた料金を払い戻すしくみ。

(3)

省エネ対策の実施

平成16年7月から、自動販売機を明るくしている蛍光灯に対して以下の対策を実施しました。自動販売機についているタイマーを活用して、建物外の設置場所では16時〜24時、建物内の設置場所では16時〜22時の時間帯に限り商品照明の蛍光灯を点灯するが、その他の時間については利用者が少ないために消灯する。ただ、暗くて利用しにくい点や危険等を考えて、人が自動販売機の前に来たときにのみセンサーで点灯するように工夫しました。又、1台に何本もついている蛍光灯は、2本までとして残りは取りはずしました。

この取組みでは、使用する電気量を大幅に削減することが出来たために、省エネ対策になると同時に大幅な電気料金の節約になり、経費を節約することが出来ました。商品照明のみ対象とした電気料金は、計算上1/3以下になります。

(4)

マイカップ自動販売機の導入

平成16年10月1日導入。先に導入したデポジット制による販売方法の導入は、あくまでも使用済み紙カップのリサイクルです。環境に優しい取り組みを進めていく為には、紙カップの使用そのものを減らしていく必要があり、マイカップでの使用はこの点を解決していく上で有効な方法です。ドイツでは既にマイカップ対応型の自動販売機が導入されていましたが、日本においては、規制緩和の流れを受けて、平成16年4月より設置場所や不特定多数を対象としない、利用者に衛生管理を周知すること等を条件に実施可能になりました。5月から調査及び準備を開始し、同年10月1日から実施しました。導入後は紙カップ自動販売機の利用総数の内、2割前後となっています。現在、大学内の建物内に4箇所4台を設置しています。取り組みが早かったことでマスコミ等でも頻繁に取り上げられ、よく知られることとなりました。

(5)

その他の取り組み

自動販売機の新規導入は、缶やペットボトルのタイプを極力控えてカップ自動販売機もしくはブリックパック等の紙製品のタイプを考えてきました。又、対応が可能な限り自動販売機はハーティタイプを導入して、身体障害者の学生にも使いやすさを提供してきました。利用者に対して、デポジット金返金の際に返金場所でユニセフへの募金を訴えた結果、継続して多くの方々に募金していただけるようになりました。



2 再発見!わたしたちの街 交流でつくるきれいな街in五福


第1回 平成17年7月9日

生協と地域の住民が協力して五福地区の清掃活動である第1回「再発見!わたしたちの街」を開催し、学生と地域住民の方々138名が参加。清掃活動と交流企画で新しい取り組みになりました。主催は、生協と五福校下保健衛生連合会、後援は、富山市等。

第1部は、富山市環境センターによる富山市のごみ処理の現状や家庭ごみの分け方や出し方についての講演。続いて、五福校下保険衛生連合会によるアパート住まいの学生によるごみ問題の解決には、学生と住民が触れ合うことが大切だというお話がありました。

第2部は、学生と住民の混合7班に別れて、周辺道路のごみ拾いをおこないました。初めて会う参加者もすぐに打ち解け、路上のごみを拾いながら雑談を楽しみました。

第3部は、生協食堂入り口において餅つき大会を開催し、食堂ホール内では、餅を食べながら参加者同士の交流が活発におこなわれました。

この企画は、他県からきてアパート住まいを始めた学生が、富山市のごみ分別を守らないことが多々あり、住民にとって頭の痛い問題であることから、学生と住民の交流をきっかけにして相互の信頼による解決策を考えていくことを目的に実施しましたが、今後も継続してほしいとの多くの参加者の声があり、大変楽しい取り組みとなりました。


第2回 平成18年5月13日
学生と地域住民による清掃活動

今年度は、とやま環境財団と富山市エコタウン事業者協議会の共催及び富山大学、富山県等の多くの後援をいただきました。当日は、学生や地域の皆さんの参加も増えました。富山大学の教職員の参加や環境問題を取り組んでおられる県内の多くの方の参加も得て、総数220名と昨年に比べて参加者は大幅に増加しました。又、様々なオプション企画も開催され、楽しい取り組みとなりました。

第1部の五福地区の清掃活動は参加者が増えたため、10コースに分かれて実施しました。当日の回収ゴミの量は、
缶類3袋15kg
ビン類1袋5kg
ペットボトル1袋2kg
可燃物21袋84kg
不燃物3袋14kg
傘20本4kg
重さにして約124kgとなりました。

第2部は、シンポジウム“もっと もっと みんなで考えよう地球環境のこと!〜環境先進国ドイツの最新情報をもとに私達の生活のあり方を考えませんか〜”と題してドイツ在住で国際ジャーナリストの今泉みね子さんの講演をお願いしました。


パネル討論の様子

続いて「地球環境を守るために、今何をすべきか考える」と題して、様々な立場の5名のパネリストによるパネル討論が行われました。

この活動を通じて学生と地域住民との交流を深め、地域のゴミ問題を解決することを目標としつつ、学生が、さらに一歩進んで居住している地域に目を向けて、地域住民として地域の行事に参加することで地域の活性化を目指していきたいと考えています。



3 上記以外の取り組んできた事柄


1.クリーンキャンパス大作戦 平成3年頃から

環境活動のスタートとなる長年取り組んできた事柄で、毎月2回学内のゴミを拾う活動です。


2.留学生チャリティ 平成7年頃から

卒業生にまだ使用できる家具・家電品を寄付してもらい、生協が預かり、主に新入留学生に渡しています。


3.新入生にゴミ分別の案内 平成9年から

新入生のアパート紹介時に富山市環境センターに協力していただき、分別回収を一人一人に案内する活動です。


4.環境講演会 平成12年から

学生や生協職員地域の方々の参加もあるシリーズの学習会で、年に1〜2度開催しています。


5.樹恩割り箸の採用と回収・リサイクル 平成13年から

環境の取り組みを飛躍的に拡げたのがこの取り組み。間伐材の端材を使った割り箸(福祉施設で生産)の採用と回収・リサイクル。現在でも約9割の回収でパーティクルボード等に再生されます。


6.紙製容器丼弁当の採用と回収・リサイクル 平成15年から

丼弁当を紙製容器に変更し、10円デポジット方式採用で約7割の回収。丼弁当は、販売数量年間10万個程度。

紙製容器丼弁当のリサイクルの流れ

7.空き缶・ペット回収システムRVM(Reverse Vending Machine)の採用 平成18年から

増え続ける空き缶・ペットボトルの回収システムとして2台の回収機を導入し、分別回収システムエコステーションを設置。当たりくじ方式を採用した結果、投入時の楽しさもあり、アパートからも袋に入れて持ってくる人が多数あり、回収効果は大幅アップ。メンテナンスは、福祉施設が実施しています。



4 終わりに


生協のゴミ・環境問題に取り組む基本姿勢は、

誰でも簡単に出来ること
日常生活の頻度が高いもの
学生に見える形で取り組む
繰り返し、学生参加を追及する
以上4点です。

生協としては、今では誰でも知っており、すぐ出来る「リサイクル」の取り組みをスタートとして、マイ箸やマイカップなどの実行しやすいこと、極力、ゴミとして出ない出さない取り組みを重視し、それらを学生達に訴えながら、学生達自身がゴミ減量化やゴミを出さない生活を考えることを今後ともサポートしていきたいと考えています。

この取り組みを通じて、学生の元気が大学や地域の元気に! 優しい学生を社会に送り出し続けたい! それが私達の願いです。

とやま経済月報
平成18年7月号