特集

環境と経営の両立を目指して
〜エコアクション21認証・登録制度について〜


エコアクション21審査人 石田 敏彦


1 環境経営とエコアクション21認証・登録制度


現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムは、私たち人類に便利で快適な暮らしをもたらしましたが、一方で、自然環境に多大な負荷を与え、そのため社会経済システムと自然環境のバランスが崩れ、地球温暖化や資源枯渇など、このままでは人類の生存そのものを脅かすような問題が顕在化してきました。

私たちは、こうした20世紀型社会経済システムから脱却し、持続可能な循環型社会の構築を目指していかなければなりませんが、そのためには事業者、消費者、行政等すべての主体が環境への取り組みを行っていく必要があります。特に社会経済活動の主要な部分を占める事業者には、規模の大小を問わず積極的な取り組みが求められています。

事業者による環境への取り組みを効果的・効率的に行うためには、自らの事業活動に伴う環境負荷を把握・評価し、目標を立て、環境行動を行い、結果を評価して見直すという「環境経営システム」が有効であり、さらに今、その環境経営を「認証」する仕組みとして、「エコアクション21認証・登録制度」の普及が図られています。

「エコアクション21認証・登録制度」とは、広範な中小企業、学校、公共機関などを対象に、環境省が策定した「エコアクション21環境経営システム・環境活動レポートガイドライン2004年版」に基づいて環境経営に取り組む事業者を、「エコアクション21審査人」が審査し、認証・登録する制度です。

エコアクション21は、1996年に当時の環境庁が、事業者による「環境活動評価プログラム」として策定し、その後何回か改定しながら普及を図ってきたもので、2004年3月には認証・登録制度を取り入れて全面改訂を行い、同年10月には「エコアクション21認証・登録制度」をスタートさせました。

これは、サプライチェーンにおける環境の取り組みを推進するため、事業者等からの第三者認証・登録制度にして欲しいとの要望に応えたもので、「財団法人地球環境戦略研究機関持続性センター(IGES-cfs)」を認証・登録機関として実施しています。


2 エコアクション21の特徴


エコアクション21(以下「EA21」と記載する)は、効果的・効率的に環境経営システムが構築でき、総合的運用が図れる仕組みであり、以下の特徴を持っています。


中小の事業者にも取り組みやすい仕組み;規格書である「環境経営システムガイドライン」の要求(12の必須項目、21の要求事項)は、図−1に示すとおりP−D−C−Aを回すために必要な最小限の内容となっていることから、運用に当たっての負担が少ない。

図 - 1
環境への取り組みを規定;環境負荷把握の必須項目として、二酸化炭素排出量・廃棄物排出量・総排水量を、取り組みの必須項目として、省エネルギー・廃棄物削減・節水を定めている。
環境活動レポートの公表(環境コミュニケーション);環境活動レポートの作成・公表を必須条件として規定している。


3 エコアクション21に取り組むことのメリット


エコアクション21に取り組むことで、次のようなメリットがあります。

まず、環境経営システム、環境への取り組み、環境報告書の3要素が一つに統合されたガイドラインを活用することで、比較的容易かつ効率的に、システム構築・運用・報告書作成ができます。

次に、環境経営システムを構築・運用することにより、環境への取り組みを推進できるだけでなく、経費の削減や生産性・歩留まりの向上、目標管理の徹底等の効果をあげることができます。すなわち、EA21のシステムに沿って、省エネ・廃棄物削減・節水等に取り組む(PDCAを回す)ことにより、資源・エネルギー投入量の削減、廃棄物発生量の削減、製品サービスの質・機能向上が図れ、生産性の向上、歩留まり改善、より付加価値の高い製品・サービスの提供が可能になります。

また、環境活動レポートを作成し、外部に公表することにより、利害関係者に対しての信頼性が向上します。

更に、環境経営を取引の条件とするサプライチェーンのグリーン化にも対応可能であり、認証取得を含めた導入費もISO14001と比べて低コストです。



4 エコアクション21への取り組みと認証・登録までの手続き


(1) エコアクション21の取り組み手順(環境経営システムの構築)

EA21の取り組みは、環境経営システムガイドライン(以下「ガイドライン」と記載)に沿って、図−2の手順で行います。


図 - 2


まず、代表者が組織全体で取り組むことを決定し、EA21の取り組みにあたっての実施体制を決めます(代表者のリーダーシップが非常に重要であり、事業者全体の取り組み姿勢に大きな影響を与えます)。

次に、初期環境調査にあたる「環境への負荷の自己チェック」、「環境への取り組みの自己チェック」をチェックシートに沿って実施し、その結果を踏まえて事業者の取り組みの方向性・枠組みを与える環境方針を策定します。

さらに、取り組むべき項目を決め、それらの環境目的・目標及び環境活動計画を策定し、計画に沿って取り組みを実施して、定期的に確認・評価を行い、代表者が取り組み状況全体を評価し、必要があれば見直しを行って継続的な改善へとつなげていきます。

また、これらの活動結果を「環境活動レポート」として取りまとめ、公表することが求められています。

なお、EA21を導入して認証・登録を望む事業者は、環境目的・目標及び環境活動計画策定後に最低3ヶ月間以上、計画に沿った取り組みを実施することが求められています。

ここで重要なことは、「前述の手順で構築した仕組みがP-D-C-Aを回して継続的改善を図れる仕組みになっているか?」ということです。すなわち、事業者が自らの事業活動と環境との係わりに気づき、事業活動に伴う環境負荷を削減するために、目標を設定し、環境活動計画に沿った取り組みが実施され、目標が未達成の場合には、状況を正しく把握して未達成の原因を追究し、必要であれば是正措置が行える仕組みとなっていることが重要です。

それには、「誰が、何を、いつまでに、どの程度、どのように行うか」が決められていて、それを実施するEA21構成員の「役割・責任・権限等」が明確にされていることが必要です。そのため、エコアクション21の目的と内容を正しく理解した代表者の強力なリーダーシップの下、全員参加で取り組むことが求められています。



(2) エコアクション21認証・登録手順

エコアクション21認証・登録制度は、「エコアクション21認証・登録制度実施要領」に沿って実施されており、その手順は図−3のとおりです。

事業者が認証・登録されるためには、認定・登録されたエコアクション21審査人による所定の審査を受審し、かつ判定委員会の審議によってガイドラインの要求事項に適合していると認められることが必要です。


図 - 3


この審査の申し込みから認証・登録までの手続きは、

まず所定様式の「エコアクション21登録審査申込書」を地域事務局へ提出し、次いで審査人を指名します。審査人は、中央事務局ホームページの審査人リストを基に指名しますが、分からない場合は地域事務局に紹介してもらうことも可能です。

指名された審査人は、事業者の認証・登録範囲、審査実施日、審査工数・費用等を記載した審査計画書を作成して事業者へ送付し、事業者と合意すれば、書類審査及び現地審査を実施して審査報告書を地域事務局へ提出します。

審査に合格し、地域事務局の判定委員会において適合していると認められた事業者は、「エコアクション21認証・登録事業者」となり、認証・登録証が交付されます。

認証・登録された事業者の環境レポートは自ら公開するとともに、中央事務局(IGES-cfs)のホームページでも公開されます。

財団法人 地球環境戦略研究機関 持続性センター(中央事務局)ホームページ
http://www.ea21.jp



(3) スケジュールと経営資源

EA21の認証・登録までの概略スケジュールは図−2に示すとおりです。期間を短くすることも可能ですが、一般的には取り組みを決定してから認証・登録まで9ヶ月程度必要です。

また、認証・登録期間は2年間で、登録1年後に中間審査、2年以内に更新審査を受審することが必要です。

環境経営システムの構築・運用にあたっては、EA21への取り組み決定、EA21の概要及び取り組みの必要性等の教育、体制整備と初期環境調査、方針策定、目的・目標設定と環境活動計画の策定、必要な文書・記録様式等の整備を行い、役割・権限・責任等を周知して取り組みを進める必要があります。

比較的容易かつ効率的な構築・運用が可能とは言いながらも若干の経営資源の投入が必要になります。特に、最初の2〜3ヶ月間に前述の作業が集中するため、専属の担当までは必要ないものの、中心となって作業分担及び取りまとめ等を行う担当者が必要です(労務量は、既存の仕組みの程度によって左右されます。例;データを収集し、集計する仕組みが既に存在するか否か、或いは目標管理を行う仕組みができているか等)。



(4) 費用等

登録料金および審査費用は図−4図−5に示すとおりで、事業所規模によって異なりますが、30〜100人規模で標準審査費用(登録審査)は20万円、登録料(2年間分)10万円程度です。

また、認証・登録された事業者は、エコアクション21のロゴマークをパンフレットやカタログ等に使用することができます。


図−4 標準審査工数・審査料(登録審査)
従業員数 業 種
サービス業、流通業等、比較的環境負荷が少ないと考えられる事業所
業 種
製造業、建設業、廃棄物処理業、修理工場等、環境負荷が比較的大きいと考えられる事業所
30人以下 2人日
(10万円+消費税)
2人日
(10万円+消費税)
31人以上
100人以下
3人日
(15万円+消費税)
4人日
(20万円+消費税)
101人以上 5人日以上
(25万円以上+消費税)
6人日以上
(30万円以上+消費税)

図−5 認証登録料(2年分)
従業員数 料  金
10人以下 50,000円 + 2,500円(消費税)
11人以上 300人以下 100,000円 + 5,000円(消費税)
301人以上 500人以下 150,000円 + 7,500円(消費税)
501人以上 200,000円 + 10,000円(消費税)


5 地域事務局((財)とやま環境財団)の役割


「財団法人とやま環境財団」は、財団法人地球環境戦略研究機関持続性センター(IGES-cfs)」から、「地域事務局」(地域におけるエコアクション21認証・登録制度の運用機関)に認定され、エコアクション21認証・登録制度の運用及び同制度の普及促進事業を行っています。

具体的には、事業者等からの審査申し込みの受付、事業者からの希望により審査人の紹介・斡旋、審査人から審査報告書の受付、事業者からの認証・登録申し込みの受付、地域判定委員会の開催と認証登録の可否の判断、判定結果等認証・登録に必要な事項の事務局への連絡等の制度運用事業に加え、セミナー開催等によりエコアクション21の普及促進を図っています。



6 自治体イニシャティブ・プログラムについて


自治体イニシャティブ・プログラムとは、自治体のイニシャティブの下、域内の多くの事業者が一斉にEA21に取り組み、域内全体の二酸化炭素排出量の削減等を実現し、「面」による普及を目的としているものです。

地域内で30〜50の事業者の参加を確保し、事業者に各分野の専門家を派遣してアドバイス・個別相談等を行って一斉に取り組むもので、事業者にとっては、中央事務局が派遣する専門家のアドバイスを無料で受けることができる等のメリットがあり、自治体にとっては、事業者の取組み支援のツールを得ることができるだけでなく、域内の二酸化炭素、廃棄物等の環境負荷削減にもつながるプログラムです。


詳細は、次のURLをご覧ください。
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1705/kj00003816.html
※ このプログラムへの参加の締め切りは、平成18年8月25日です。



7 結び


エコアクション21は、事業者の環境経営システムを通じて環境効率を向上させることにより、究極の目的である持続可能な循環型社会の構築に資するものです。

環境効率の向上とは、資源やエネルギーといった事業活動へのインプットを削減し、事業活動によって生じるアウトプットのうち製品・サービスといったグッズを増加させるが、環境負荷等のバッズを削減することであり、例えば、売上高百万円当たりの廃棄物量や二酸化炭素排出量といった指標を改善していくことです。このような取り組みは経営活動そのものであり、企業価値の向上につながるものであります。

多数の事業者の皆様が、エコアクション21の導入によって環境と経営を統合され、自社の環境効率向上を通じて持続可能な循環型社会の構築に貢献されるよう期待しています。



問い合わせ先
財団法人 とやま環境財団(エコアクション21地域事務局)
http://www.tkz.or.jp/index.html
住所 :〒930−0094
富山市安住町7番18号 安住町第一生命ビル2F
電話:076-431-4607
FAX:076-431-4453
E-mail:tkz5@tkz.or.jp 



とやま経済月報
平成18年8月号