特集

とやま食料事情〜農業編(第1回)
〜2005年農林業センサス等の結果から〜

統計調査課 中村繁行


1 はじめに

(1)いつまで続く!?「飽食の時代」
 現代は「飽食の時代」と言われる。テレビではいわゆる「グルメ特集」が人気番組になり、街のレストランでは家族や友人で食事をしながら歓談する光景がみられる。24時間営業のファストフード店が夜空を彩るネオンサインとともに客を待ち、コンビニエンス・ストアでは欲しい弁当類や調理食品が簡単に手に入る。新聞には「産地直送」や「有機栽培」と銘打った野菜やブランド肉、魚類などの広告チラシが折り込まれ、人々は満足度の高い食材を求めて、買い物を楽しむという具合である。
 しかし、わが国の食料自給率は昭和40年度から平成15年度の間に、カロリーベース73%から40%まで低下し、食料の多くを輸入農産物に頼っている。農業者数や生産額も減少しており、しかも農業就業人口は急速に高齢化が進んでいる(図表1)。その一方で、世界的な人口増加に加え、中国など東アジア諸国の急速な工業化や経済発展のため、世界の食料需給は中長期的にはひっ迫する可能性もはらんでいる。わが国においても、いつまでも豊かな食生活を続けられる保証はないのである。


図表1 国内農業者数・耕地面積・農業生産の推移
図表1 国内農業者数・耕地面積・農業生産の推移
資料:農林水産省統計表、同省「不測時の食料安全保障マニュアル」


(2)国内農業生産だけで食料を賄うと・・・・
 「米飯は朝夕茶碗1杯、三度の食事の主役はいも、おかずは夕食の焼き魚1切れ程度・・・・」。
 農林水産省
「不測時の食料安全保障マニュアル」では、平成27年度(注)においてわが国の国内農業生産だけで供給できるカロリー量(1人1日あたり2,020kcal)を賄える1日の食事メニュー例をこのように示している(図表2)。これは、昭和20年代後半の食事水準に相当し、国民が最低限必要とするカロリーは確保しているというものの、現在の豊かな食生活からは想像できないものである。
(注)平成27年度:平成17年3月に閣議決定された「新たな食料・農業・農村基本計画」における計画の最終目標年度。この計画では、平成15年度で40%の食料自給率(カロリーベース)を平成27年度に45%(同)まで引き上げることなどを目標としている。


図表2 国内生産のみで2,020kcal供給する場合の一日の食事のメニュー例
図表2 国内生産のみで2,020kcal供給する場合の一日の食事のメニュー例
資料:農林水産省「不測時の食料安全保障について」から転載


(3)不安定な食料供給
 食料の多くを海外からの輸入に頼るわが国の食料事情では、冷害や台風多発による異常気象、貿易相手国の事情による輸入停止など、国内外の様々な要因によって食料供給の混乱が生じる可能性がある。つい最近では、平成16年の台風襲来や平成17年末から18年初の豪雪による生鮮野菜の値上がりの例(図表3)や、BSEによるアメリカ産牛肉の輸入停止により、大手外食チェーン店が主力メニューである牛丼の販売停止に追い込まれた例がある。平成5年の冷害による凶作を原因とする米不足の例もある(図表4、5)。そして、将来の食料供給について、多くの人が不安を感じている状況である(図表6)。


図表3 キャベツ、レタスの消費者物価指数の推移
図表3 キャベツ、レタスの消費者物価指数の推移
消費者物価指数の総合指数は100を若干下回る水準で推移しているが、キャベツ、レタスは台風や豪雪などの自然災害のたびに価格が大きく変動している。
資料:消費者物価指数年報(総務省統計局)

★消費者物価指数
 消費者が購入する各種商品の価格変化を総合して平均的な物価の動きをみるために作成するもので、基準年を100とした指数で表す。
資料:総務省統計局「消費者物価指数のあらまし」

図表4 稲作況指数の推移(平3〜7)

図表4 稲作況指数の推移(平3〜7)
資料:農林水産省統計表(農林水産省統計部)

★作況指数
 作柄の良否を表す指標で、10a当たり平年収量に対するその年の10a当たり(予想)収量の比率で表す。稲の場合、106以上を「良」、102〜105を「やや良」、99〜101を「平年並み」、95〜98を「やや不良」、94〜91を「不良」、90以下を「著しい不良」としている。
資料:農林統計協会「農林水産統計用語事典」

図表5 米類の消費者物価指数の動き(平5〜7)
図表5 米類の消費者物価指数の動き(平5〜7)
資料:消費者物価指数年報(総務省統計局)


図表6 将来の食料供給についての考え
図表6 将来の食料供給についての考え
資料:総理府「農産物貿易に関する世論調査」(平12.7)


2 富山県農業の今(その1)〜生産構造を中心に〜

 図表1に見られるように、国内農業の担い手である農業就業人口は減少し、高齢化が進んでおり、農業生産も減少傾向にある。ここでは、先ごろ公表された「2005年農林業センサス」の結果をもとに、富山県の農業の現状と今後について2回にわたり分析する。第1回目となる本稿では、主として農業経営体及び農業者の概況について分析する。

★農林業センサス
 農林業に関する基礎データを作成し、食料・農業・農村基本計画などの諸施策や農林業に関する諸統計調査に必要な基礎資料を整備することを目的に、農林業を営む全ての経営体を対象に実施される全数調査。「農林業の国勢調査」とも呼ばれる。  昭和25年以来、農業については5年ごとに、林業については10年ごとに2月1日を調査日として行われてきたが、平成17年2月1日に実施された「2005年農林業センサス」(以下「2005年センサス」という。)では、それまで「農家調査」「林家調査」などそれぞれの業種ごとに計6本に分かれていた調査「農林業経営体調査」として1本化し、世帯・組織等の区別にとらわれずに、一定規模以上の農林業を営む者を「経営体」として一元的に把握できる調査体系に改められた。背景には、品目横断的経営安定対策の実施により、国の支援対象が個々の「農家」から意欲と能力のある担い手である「経営体」中心へ変化していることがあげられる。こうした中で、統計調査も農業施策の実情に適合する必要があり、2005年センサスにおいて大幅な見直しが行われた。
つっちー
「つっちー」
2005年農林業センサス
本稿で使用する統計データについて
 本稿では「2005年農林業センサス」(2005年センサス)、「2000年世界農林業センサス」(2000年センサス)、「1995年農業センサス」(95年センサス)の結果をもとに本文及び図表を作成している。ただし、2005年センサスは2000年センサス及び95年センサスと調査体系が異なるため、2000年センサス及び95年センサスの結果については、2005年センサスの調査体系に合わせて組み替え参考値として集計し、2005年センサスの結果と比較検討している。
 組み替え参考値については、可能な限り95年センサスにまで遡って組み替え集計したが、やむを得ず2000年センサスとの比較だけにとどめたものもある。また、2005年センサスの結果は、平成18年2月末現在の概数値である。今後、農林水産省から本稿に記載の数値と異なる結果が公表された場合は、農林水産省の公表数値によるものとする。
 なお、本稿に掲載する図表については、上記の各センサスの結果をもとに作成したものについては資料名を表記せず、それ以外の統計から作成したものについてのみ資料名を表記するものとする。

(1)農業経営体の現状
ア 農業経営体数の推移〜組織化が進む〜
 農業経営体数について10年前と比較すると、全体では30.5%の減少となっている(図表7)。
内訳をみると、家族経営の農業経営体は減少しているが、農事組合法人などの法人や集落営農などの「組織等」は増加している。これは、個々の家族経営の農業経営体が集落営農などに加わった結果、自らは「農業経営体」として分類されなくなったことが主な原因と考えられる。

★農業経営体
2005年センサスから採用された概念で、経営耕地面積30a以上又は農産物販売金額が過去1年間で50万円以上その他農林業センサス規則で定める基準(露地野菜作付15a以上など)以上若しくは農作業の受託を行う組織又は世帯

★家族経営の農業経営体
:農業経営体のうち、世帯による経営のものをいう。

★組織等
:農業経営体のうち、「家族経営の農業経営体」以外のものをいう。具体的には、家族経営でない法人集落営農などの任意組織等地方公共団体・財産区を加えたものをいう。

★集落営農
:集落を基礎として、多様な農家が機械・施設の共同利用などを通じて農業生産の一部又は全部を行う経営形態。集落営農にはいくつかの形態があるが、その中でも、規約に基づき生産から生産物の販売、収支決算、収益の分配に至るまでの経営のすべてを共同で行っている組織協業経営体という。

★協業経営体化と農業経営体数の数え方について
(図表8)

  図表8のように、協業経営体化前10戸の農家(農業経営体)として計上されたが、協業経営体化後は、協業経営体に参加する個々の農家は、概ね農業経営体としては計上されず、協業経営体が1農業経営体として計上されるため、農業集落の経営耕地面積は同じでも、農業経営体数は大幅に減少する。したがって、「農業経営体数の減少=農業生産規模の減少」とは必ずしも言えず、経営耕地面積や作付面積、生産額など他の指標と組み合わせて総合的に判断する必要がある。


図表7 農業経営体数の推移
図表7 農業経営体数の推移

図表7 農業経営体数の推移-2


図表8 協業経営体の例

〜10戸の農家A〜Jで構成する甲集落全体が1つの協業経営体になった場合の考え方
協業経営体化前
〔甲集落〕
  協業経営体化後
〔甲集落改め甲協業経営体〕
協業経営体化前 → 協業経営体化後

1 形態
 販売・経理は個々の農家A〜Jで実施。経営耕地個々の農家に帰属(各農家の経営耕地面積は1haとする)。

2 農林業センサス上の表し方
農業経営体(販売農家)数は10
(農家A〜Jは個々の農業経営体(農家)として計上される)
甲集落経営耕地面積合計10ha
 
1 形態
 販売・経理は甲協業経営体で一元的に実施。個々の農家A〜Jは、甲協業経営体に耕地を貸し付け。

2 農林業センサス上の表し方
農業経営体数は1
甲協業経営体が1経営体として計上され、構成員であるA〜Jは農業経営体としては計上されなくなる)
甲集落経営耕地面積合計10ha(変わらず)


イ 経営耕地面積〜10年間で約8%の減少、組織等への集約化が顕著〜
 この10年間の経営耕地面積の推移をみると、農業経営体の経営耕地面積58.5千ha(平7)から54.0千ha(平17)へと7.7%減少しており、農業経営体の減少率に比べると、経営耕地面積の減少率は大きくはない。農業経営体に自給的農家を加えた場合の経営耕地面積でも同程度の減少率となっている(図表9)。
 内訳をみると、組織等の経営耕地面積は、2.5千ha(平7)から10.9千ha(平17)へと4.4 倍になった一方で、家族経営の農業経営体の経営耕地面積は、56.0千ha(平7)から43.1千ha(平17)へと23.0%の減少となっている。これは、集落営農の進展により、集落営農などの組織等に経営耕地が集積したことが主な理由と考えられる。


図表9 経営耕地面積の推移

図表9 経営耕地面積の推移


★自給的農家
統計上は経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯又は農産物販売金額が年間15万円以上の世帯を「農家」というが、経営耕地面積30a未満又は農産物販売金額が過去1年間で50万円未満農家を「自給的農家」といい、ここ10年間は8,000戸前後で推移している。これに対し、経営耕地面積30a以上又は農産物販売金額が過去1年間で50万円以上の農家を販売農家という。

 また、農業経営体の借入耕地面積をみると、全体では15.8千ha(平12)から21.4千ha(平17)へと、ここ5年間で35.4%増と大幅に増加している(図表10)。
 その内訳をみると、家族経営の農業経営体は10.1千ha(平12)から11.0千ha(平17)へと8.9%増にとどまるが、組織等については5.7千ha(平12)から10.4千ha(平17)へと82.5%増加している。
 このことから、借入耕地が増加する形で、経営耕地が家族経営の農業経営体から組織等の大規模な農業経営体へ集約されていることが読み取れる。
図表10 農業経営体の借入耕地
図表10 農業経営体の借入耕地

★耕地面積
 農作物の栽培を目的とする土地の面積をいう。耕地には、けい畔(「あぜ」など主として本地の維持に必要なもの)を含む。土地の利用収益者が主観的に農作物を栽培しようとする意思を有することとその土地に客観的に農作物の栽培が可能であることなどの要件がある。

★経営耕地面積
 農林業経営体が経営する耕地の面積をいい、経営体が所有している耕地のうち貸し付けている耕地耕作放棄地(過去1年間作付けせず、今後も作付けする考えのない耕地)を除いたものに、借り入れている耕地加えたものをいう。
 耕地面積には、農林業経営体に分類されない者(学校、試験場など)が所有するものも含まれるが、経営耕地面積「農業経営体」など一定の要件に該当する者が経営(所有とは限らない)する面積をいう点で両者は異なる

図表11 経営耕地の耕地種類別割合
全国との比較

図表11 経営耕地の耕地種類別割合 全国との比較
富山県は水田の割合が高い
 富山県農業の特色の一つに、部門別経営割合、作付面積、農業産出額などいずれの指標においても、稲作のウェイトが非常に高いことがあげられる。経営耕地面積においても田の占める割合は97.0%と高く(図表11)、その順位は全国でもトップクラスに位置する。

ウ 進む農業経営体の大型化〜経営耕地面積4ha以上の大規模な農業経営体が増加〜
 経営耕地面積規模別の農業経営体数については、平成12年、17年ともに1ha未満の経営体が最も多く、1〜2haの経営体がこれに次ぐ(図表12)。
 次に、経営耕地面積規模別農業経営体数の増減率について、平成12年と平成17年を比較してみると、4ha以上の経営体は増加しており、特に10ha以上の増加率が53.6%と大きくなっている反面、3ha未満の経営体は減少している(図表13)。


図表12 経営耕地面積規模別農業経営体数の推移
図表12 経営耕地面積規模別農業経営体数の推移

図表13 経営耕地面積規模別農業経営体数の増減率
図表13 経営耕地面積規模別農業経営体数の増減率


 また、農業経営体の増減率法人・非法人(「法人化していない」)別にみると、法人全体では20.4%増となっており、中でも農事組合法人は50.8%増となっている(図表14、15)。
 法人化している農業経営体の割合は、経営体数においては1.0%にすぎず、これに任意組合等の組織を加えた「組織等」の区分でみても2%台半ばにすぎないが、経営耕地面積や借入耕地面積に占める割合は大きくなっている(図表9、10)。
 一方、非法人の増減率は前回比△19.8%となっているが、その内訳をみると、家族経営の農業経営体の減少率が高く、集落営農などの任意組合は横ばいである(図表15)。
 全国と比較すると、全国では法人全体が△9.0%となっているが、富山県では法人全体が20.4%増であり、中でも農事組合法人や会社の増加率が高い。こうしたことから、富山県においては、法人や集落営農などの組織等への農地集約化が進展し、農業経営体の規模が拡大しているといえよう。


図表14 組織別農業経営体数の増減率
図表14 組織別農業経営体数の増減率

図表15 組織別農業経営体数の比較
(単位:経営体)
図表15 組織別農業経営体数の比較


★協業経営体などの組織化が進んだ理由
富山県では、昭和60年頃から全国に先駆けて、集落営農の育成に積極的に取り組み、生産の協業経営への発展を図り、さらに法人化を進めている。協業経営化のメリットとしては
(1)機械・設備の共同使用や作業の共同化を進めることによって、経費の削減や農作業の合理化ができること。
(2)経営主の高齢化などにより耕作放棄される農地の発生を防止すること などがあげられる。

★認定農業者
経営改善に取り組む意欲のある農業者が「農業経営のスペシャリスト」を目指すための「農業経営改善計画」を作成し、市町村が認定した者をいう。集落営農と並んで地域における担い手と位置づけられている。

★農業法人
農地等の権利取得ができる農業生産法人、農地の権利取得はできないが、農業関連施設の設置・共同利用や農作業の共同化の事業を行うことができる農事組合法人、畜産・施設園芸等の非土地利用型の会社に大区分される。農業生産法人は、さらに農事組合法人と会社に区分される。従来、株式会社は農業生産法人にはなれなかったが、平成17年9月からは、耕作放棄地などの遊休農地が多い地区で、市町村との協定締結を条件に、農地を借り入れる形農業生産法人になることができるようになった。

★農事組合法人
農業生産の協業を図ることにより共同の利益を増進することを目的に設立される法人で、農地の権利は取得できないが農業に関わる共同の設置又は農作業の共同化の事業を行うものと、「経営法人」と呼ばれる土地利用型のものがあり、後者は農業生産法人に含まれる。

エ 部門別経営体数〜9割が稲作主体の単一経営〜
 販売のあった農業経営体を部門別にみると、富山県では単一経営の経営体が94.4%を占め、中でも稲作主体は90.8%になる。反面、単一経営の経営体でも野菜主体や果樹・畜産主体は少ない。また、準単一複合経営は4.7%、複合経営は0.9%に過ぎない。


図表16 農業経営組織別(部門別)経営体数
(単位:経営体、%)
図表16 農業経営組織別(部門別)経営体数

 次に、部門別経営体数の割合について、全国と比べると単一経営の比率が高く、特に稲作主体の経営体の比率が高くなっている。


図表17  部門別経営体数の割合 全国との比較
図表17 部門別経営体数の割合 全国との比較

★単一経営
農産物販売金額の販売金額1位の部門(主位部門)の割合が8割以上の経営体。

★準単一複合経営
主位部門の割合が6割以上8割未満の経営体。

★複合経営
主位部門の割合が6割未満の経営体。

(2)農業者(販売農家の農業従事者及び農業就業人口)の現状
ア 販売農家の農業従事者〜過去10年間で29.7%減少、65歳以上の占める割合が増加〜
 販売農家の農業従事者数は、137,365人(平7)から96,542人(平17)になり、ここ10年間で29.7%減少した(図表18)。
 中でも、15〜39歳の階層は31,594人(平7)から19,268人(平17)へと39.0%の減少となり、40〜59歳の階層も55,821人(平7)から35,653人(平17)へと36.1%の減少となった。
 一方、65歳以上の階層は33,706人(平7)から32,281人(平17)へと4.2%の減少にとどまった。この結果、65歳以上の占める割合は、24.5%(平7)から33.4%(平17)へとここ10年間で8.9ポイント上昇している。
なお、平成17年の販売農家の農業従事者のうち、65歳以上の占める割合は、 富山県の方が全国に比べ、若干低くなっている(図表19)。


図表18 販売農家の農業従事者数の推移
図表18 販売農家の農業従事者数の推移


図表19 販売農家の農業従事者数年齢別割合 全国との比較
図表19 販売農家の農業従事者数年齢別割合 全国との比較

★農業従事者
販売農家の15歳以上の世帯員のうち、自営農業に従事した者。

★農業就業人口
販売農家の15歳以上の世帯員のうち、主として自営農業に従事した者。具体的には、自営農業のみに従事又は自営農業以外の仕事に従事していても年間労働日数からみて自営農業の方が多い者をいう。

★農業就業人口と農業従事者の違い
販売農家の15歳以上の世帯員を対象としている点では農業従事者と同じであるが、農業従事者他の仕事への従事日数との多い少ないを問わないのに対し、農業就業人口は自営農業に従事した者のうちでも、自営農業の従事日数の方が多い者のみをいう点で両者は異なる。

★販売農家
経営耕地面積が30a以上又は農産物販売金額が過去1年間で50万円以上の農家

イ 農業就業人口〜過去10年間で16.9%減少、65歳以上の割合が増加〜
 農業就業人口は、51,256人(平7)から42,617人(平17)となり、ここ10年間で16.9%減少した(図表20)。
 年齢別にみると、65歳未満の階層はいずれも減少しており、特に40〜59歳の階層は10年前に比べ48.8%減少、60〜64歳の階層は43.7%減少した。これに対し、65歳以上の階層は、平成12年に比べると9.0%減少しているものの、平成7年の27,543人に比べると、平成17年は28,381人と3.0%増加している。
   この結果、65歳以上の占める割合は、平成7年の53.7%から平成17年の66.6%へと12.9ポイント上昇している。
 また、平成17年の農業就業人口について、全国と比較すると、65歳以上の占める割合富山県の方が8.5ポイント高くなっている(図表21)。


図表20 販売農家の農業就業人口の推移
図表20 販売農家の農業就業人口の推移


図表21 販売農家の農業就業人口年齢別割合 全国との比較
図表21 販売農家の農業就業人口年齢別割合 全国との比較

※農業就業人口において65歳以上の占める割合が高い理由は・・・・
 富山県の場合、販売農家の農業従事者のうち、65歳以上の占める割合全国よりも低くなっているが、販売農家の農業就業人口のうち、65歳以上の占める割合全国より高くなっている。これは、高い兼業農家率が主な理由と考えられる。
平成17年の兼業農家率について全国と比較すると、富山県は90.2%と全国(77.4%)を大きく上回る。(図表22)。富山県は、兼業農家の中でも第2種兼業農家の占める割合が高いため、60歳未満の農業従事者は、自営農業よりも兼業の仕事に従事する日数の方が長くなり農業従事者には該当しても農業就業人口には該当しないことになる。こうしたことが、農業就業者における高齢者の割合が高くなっている一因と考えられる(図表23)。

図表22 専兼業別分類 全国との比較
図表22 専兼業別分類 全国との比較

★専業農家
世帯員の中に兼業従事者が1人もいない農家。

★第1種兼業農家
世帯員の中に兼業従事者が1人以上おり、かつ農業所得の方が兼業(農外)所得よりも多い農家。

★第2種兼業農家
世帯員の中に兼業従事者が1人以上おり、かつ兼業(農外)所得の方が農業所得よりも多い農家。


図表23 就業状態別農業従事者の推移
図表23 就業状態別農業従事者の推移
平成12年、17年ともに、「兼業が主」においては、60歳未満が8割以上を占める。ところが、農業就業人口(「自営農業だけに従事」+「自営農業が主」)についてみると、60歳未満が占める割合は2割台にとどまる。

ここ10年間の専兼業別販売農家数の推移は
 平成7年から17年までの専兼業別販売農家数の推移をみると、兼業農家率は9割を超える水準で推移している(図表24)。中でも第2種兼業農家の割合は高水準で推移しているが、第2種兼業農家41,843戸(平7)から25,997戸(平17)へと37.9%減少する一方で、専業農家1,908戸(平7)から3,071戸(平17)へと61.0%増加し、第1種兼業農家1,908戸(平7)から2,395戸(平17)へと25.5%増加している。
 第2種兼業農家の減少が著しいのは、離農のほか協業経営体などの組織等に耕地を貸し付けることによって、自らは販売農家の定義からはずれたことなどが原因と考えられる。

図表24 専兼業別販売農家数の推移
図表24 専兼業別販売農家数の推移

☆ここまでのまとめと次回の内容

 以上、富山県の農業経営体(販売農家)の現状について、過去3回にわたる農林業(農業)センサス結果をもとに、「組織」と「人」の生産構造面から検証してみた。その結果、富山県の農業経営体数は、全体としてはこの10年間で3割減少しているが、一方で集落営農の推進などにより組織化、大型化が進展している。また、農業者(農業従事者及び農業就業人口)は、依然として減少、高齢化が進んでいる状況にあることが明らかになった。
 次回(5月号)においては、引き続き農林業(農業)センサスや関連する他の農業生産統計をもとに、富山県の農産物生産の状況や農業産出額の推移、農業関連事業への取り組みなどについて検証する。

★品目横断的経営安定対策
平成17年3月に閣議決定された「新たな食料・農業・農村基本計画」の柱の一つで、「経営所得安定対策等大綱」(平成17年10月27日決定、以下「大綱」という。)の中で記述。平成19年度から導入
 これまでは、すべての農業者を対象に、米、麦、大豆などそれぞれの品目ごとに経営安定資金や交付金が交付されていた。しかし、国内農業の脆弱化はとまらず、WTOの農業交渉次第では、農産物輸入自由化も進められることになり、国内産農産物は価格面、品質面等で輸入農産物との厳しい競争にさらされることになる。このため、国では支援の対象「全農家一律」から「意欲と能力のある担い手」に限定し、支援の内容米、麦、大豆等については個々の品目ごとの価格に着目した支援から、経営全体に着目した支援へ転換する。具体的には、収入の変動による影響を緩和するための減収補填策(ナラシ対策)や諸外国との生産条件格差を是正するための補填(ゲタ対策)を経営体単位で行う。ただし、野菜、果樹、畜産等は、引き続き品目別対策が行われる。

★品目横断的経営安定政策と集落営農
大綱は担い手の育成・確保を農業の緊急課題としており、認定農業者の拡大と集落営農による共同経営の推進を柱としている。なお、品目横断的経営安定対策の対象は、原則として4ha以上の経営耕地を有する認定農業者又は20ha以上の経営耕地を有する一定の要件を満たす集落営農に限られる。

《参考文献》 ・2005年農林業センサス結果報告書(富山県版)(富山県経営管理部統計調査課)
 ・2006現代用語の基礎知識(自由国民社)
 ・農林水産統計用語事典(農林統計協会)
 ・食料・農業・農村白書(平成16年度版)(農林水産省)
 ・不測時の食料安全保障について(農林水産省)
 ・ 食料・農業・農村基本計画(平成17年3月25日閣議決定)(農林水産省)
 ・ 経営所得安定対策等大綱(平成17年10月)(農林水産省)

とやま経済月報
平成18年4月号