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家計調査結果からみた景気低迷期における
「被服及び履物」の支出の動向
統計調査課 本木京子
政府は昨年11月の月例経済報告において、景気持ち直し宣言、本年2月に「回復宣言」をし、個人消 費も回復基調にあるといわれるが、今稿では、家計調査結果からバブル経済崩壊後の長い個人消費の低迷期を振り返り、特に近年低迷している「被服及び 履物」の消費支出の動向と、過去3年の家計調査結果から「被服及び履物」の支出の地域的特徴を見る。
本論に入る前に、今回採用した指数値等は、下記のとおりとしたことをお断りしたい。![]()
1 消費支出の近年の全般 的な動向
「被服及び履物」の動向を見る前に、消費支出全体の全般的動向を見てみる。
(1)全国
消費支出全体を実質でみると(図2)、平成3年の 103.8から平成8年の実質108.3までゆるやかながら上昇傾向にあったが、その後は低下傾向となり、平成15年には実質105.1となった。消費支 出は景気変動に対し比較的安定的に推移して、景気を下支えするといわれるが、さすがに近年は個人消費も低迷しているといえる。
10大費目別指数の推移を見ると、「被服及び履物」は名目で(図 1)平成4年から、実質では平成3年から低下傾向にある。
図1 1人当たり消費支出指数(名目)の推移(全国)
平成元年=100
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図2 1人当たり消費支出指数(実質)の推移(全国)
平成元年=100
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(2)富山市
調査世帯が95世帯程度と標本数が少ないため、各年の増減にバラつきがあるが、消費支出全体は、概ね平成11年まで堅調な動きを見せているが、11年を ピークに増減を繰り返している。(平成3年:名目117.1、実質110.1→平成11年:名目146.4、実質131.2→平成15年:名目 139.3、実質129.1)
しかしながら、全国に比べれば堅調といえ、5年連続消費支出全国1位の結果が表われている。
10大費目別指数の推移を見ると、「被服及び履物」は実質で平成4年以降低下傾向にあり、近年は教育に次いで低い水準となっている(図3、図4)。
図3 1人当たり消費支出指数(名目)の推移(富山市)
平成元年=100
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図4 1人当たり消費支出指数(実質)の推移(富山市)
平成元年=100
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2 「被服及び履物」の動 向
「被服及び履物」に焦点をあて、具体的な動きを見てみる。
「1人当たり消費支出増減率項目別実質寄与度」(表1)をみると、消費支出のピーク年である平成8年に比べ15年まで全国の消費支出は実質-3.0%の 減少となっているが、「被服及び履物」の寄与度はそのうち-1.3%で「その他の消費支出」、「食料」に次いで、消費支出を押し下げる要因となっている。
また、同様に富山市をみると、平成8年に対し平成15年は消費支出全体で3.9%の増加となっているが、そのうち「被服及び履物」の寄与度は-1.4% で「住居」に次いで消費支出を押し下げている。
表1 1人当たり消費支出増減率項目別寄与度
(平成15年の平成8年に対する増加率)
消費支出
当たり食料 住居 光熱・
水道家具・
家事用品被服及び
履物保健・
医療交通・
通信教育 教養
娯楽※その他の
消費支出全 国 -3.0 -1.7 -0.3 0.3 0.1 -1.3 0.3 1.6 -0.7 0.6 -1.9 富山市 3.9 -1.3 -2.1 0.5 -0.1 -1.4 0.9 1.6 0.5 0.7 4.6
※ その他の消費支出は対応する消費者物価指数がなく実質化できないの で、全体の寄与度から各項目の寄与度を差し引いて求めた。
被服及び履物にはいわゆる選択的支出(家計全体の支出額増減の影響を個別に受けやす い支出品目)に該当する品目が多く含まれ、近年の個人の収入・支出の減少を、最も大きく影響を受けた費目といえる。
図5を見ると、平成7年を100とした全国の基礎的支出が平成15年に95.9であるのに対し、選択的支出は87.6と大幅に低下している。
図5 基礎的・選択的支出指数の推移(全国)
平成元年=100
具体的に1人当たり「被服及び履物」の消費支出額の対前年同月増減率(図6)をみると全国では、平成3年以降平成15年まで一貫して減少を続け、平成元年を100として66.8と低い消費 水準にある(図8)。
同様に富山市(図7)をみると、平成4年から連続して4年間実質減少したが、平成8年以降増減を繰り返しており (図7)、平成元年を100として76.0の水準となっている(図9)。
「被服及び履物」の消費支出指数(実質)の内訳をみると、全国では、「和服」、ネクタイ、マフラー・スカーフ、靴下などの「他の被服」、仕立て代、ク リーニング代などの「被服関連サービス」が大幅に低下している。「洋服」は「被服及び履物」全体の動きとほぼ同水準で、「下着類」は若干上回る水準で推移 している。
「シャツ・セーター類」、「履物類」は他項目と同様に低下しているものの比較的高水準で推移している(図8)。
富山市について見ると、「洋服」と「下着類」が「被服及び履物」全体の指数の水準を下回って推移している(図9)。
図6 被服及び履物1人当たり消費支出対前年増減率(全国)
図7 被服及び履物1人当たり消費支出対前年増減率(富山市)
図8 1人当たり被服及び履物消費支出指数(実質)項目別推移(全国)
平成元年=100
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図9 1人当たり被服及び履物消費支出指数(実質)項目別推移(富山市)
平成元年=100
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※和服は毎年の変動が大きすぎるので割愛した。
「被服及び履物」の中で支出額が多い品目について、1世帯当たりの購入数量を過去 15年間について見てみる。
全国では、子供服、ネクタイ、婦人靴、背広服、婦人服の購入が減少傾向にある。子供服の減少は少子化の進展が影響していると考えられる。「他の婦人用 シャツ」、「他の男子用シャツ」が増加し、カジュアルスタイルの被服等の購入が増加している(図10-1)。
富山市についても各年の変動が激しいものの、全国と概ね同様の傾向が見られる(図10-2)。
以上から、雇用環境、所得環境の悪化により消費者の低価格志向が強まり、平成12年頃からの「ユニクロ効果」で市場に中国製の廉価な商品が出回ったこと もあり、普段着の購入が増えたものの、比較的高価格の通勤着や、フォーマルな衣料等の購入が買い控えられたものと思われる。
図10-1 主な品目の購入数量の推移(1世帯当たり)(全国)
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図10-2 主な品目の購入数量の推移(1世帯当たり)(富山市)
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3 地域別特徴
(1)都道府県庁所在都市別の支出状況
平成13年から15年までの「被服及び履物」の支出額の都道府県庁所在都市別順位で見てみる。
最も支出額の多いのは、高松市で次いで、広島市、東京都区部(以下「上位3都市」という。)の順となっている。上位3都市の支出内訳を見ると、「洋 服」、「シャツ・セーター類」とも全国平均を大きく上回っている(東京都区部の「シャツ・セーター類」を除く)。
因みに富山市は16位、「着倒れ」といわれる京都市は意外にも26位である(表2、3)。
表2 1人当たり被服及び履物費年間支出額
都道府県庁所在都市別順位
(13、14、15年3年平均)
都市名 高松市 広島市 東京
都区部さいたま市 宇都宮市 横浜市 岡山市 大分市 福岡市 金沢市 順位
金額(円)1
74,1222
72,9343
71,4904
71,3875
70,4476
70,3117
67,4898
67,4149
66,83710
66,670都市名 富山市
和歌山市 静岡市 青森市 鳥取市 那覇市 順位
金額(円)16
64,546
43
67,54044
67,46745
51,27246
50,04047
34,372
表3 被服及び履物の支出の多い都市の支出内訳
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全国平均を100とした3年平均都道府県庁所在都市別指数を6段階に分け、地図上で表すと(図 12)関東周辺、山陽、北九州地方で高くなっている。
図12 1人当たり被服及び履物消費支出−都道府県庁所在都市別指数
(平成13年、14年、15年平均)
(2)関係指標との相関
全国都道府県庁所在都市の1人当たり「被服及び履物」消費支出額と世帯構成や気象との相関を見てみる。
1) 世帯構成の特徴との相関
世帯人員が多いと、1人当たり支出額は低くなる傾向がある。具体的には高松市、広島市、東京都区部の上位3都市は富山市より世帯人員が少なく、1人当た り「婦人用洋服」が富山市より多くなっている(図13)。家族が多いと節約する傾向にあると考えられる。
18歳未満世帯人員が多いと、「被服関連サービス」が減少している。子供服はカジュアルなものが多く、家庭での洗濯で間に合うからでもあろう(図14)。また、18歳未満人員が多いと、婦人用洋服が減少する。教育費に多く金がかかるためであろう。
有業人員と各支出との目立った相関は見られなかった(「被服及び履物」との相関係数は-0.055)。
図13 世帯人員と婦人用洋服
図14 18歳未満人員と被服関連サービス
図15 18歳未満人員と婦人用洋服
2) 気象との相関
気象と「被服及び履物」の支出との相関を調べてみる。
図16を見ると、年平均相対湿度が高いと、「洋服」の支出が減少する。湿度の低い上位3都市は富山市より多い支出となっている。
図17をみると、快晴日数が多いと「シャツ・セーター類」の支出が多くなっている。富山市は快晴日数が13日(平成14年)と少ないが、東京都区部より 多く、広島市、高松市に比べ少ない支出となっている。
図18を見ると、降水日数が多いと「洋服」の支出が減少する。富山市は降水日数が多いので洋服の支出が上位3都市に比べやはり少なくなっている。
図16 年平均相対湿度と洋服
図17 快晴日数とシャツ・セーター類
図18 降水日数と洋服
3) 実収入との相関
家計調査の勤労者世帯実収入との相関を見てみる。図19のとおり、「被服及び履物」の支出と現金給与総額との相関はかなり強い。富山市は実収入からみて 全国的傾向と概ね合致している。
図19 家計調査勤労者世帯実収入と被服及び履物
4) 富山市の「被服・履物」支出の傾向
これまで、1人当たり「被服及び履物」の支出の地域別特徴について、世帯構成、気象、収入の相関から見てきたが、富山市の傾向は概ね全国的傾向と合致し ているように思える。
具体的にみると、
・世帯人員が多いために「婦人用洋服」への支出が少ない。
・年平均相対湿度が高いために「洋服」への支出が少ない。
・快晴日数が少ないために「シャツ・セーター類」への支出が少ない。
・降水日数が多いために洋服への支出が少ない。
・世帯実収入が多いために被服及び履物への支出が多い。
ということになる。これらから富山市の状況については、金銭的には余裕があるが、世帯人員が多く、共働率が高いため、女性は休日も家事に忙しく、さらに男 女ともに気候の影響もあって外出することが少ないために、外出用の衣服を多く買う必要性が低いと想像される。
一方、上位3都市を見ると、
・世帯人員が少ないため婦人用洋服への支出が多い。
・降水日数が少ないために洋服への支出が多い。
・世帯収入が多いために被服及び履物への支出が多い。
といった相関について値が近似曲線の上方にあり、これらが相まって「被服及び履物」への支出を増加させていることがわかる。
4 まとめ
今稿では、前段において、これまで景気の低迷により所得環境が悪化する中で、「洋服」や「履物」、ネクタイ、靴など選択的品目の多い「被服及び履物」の 支出が圧迫されてきたこと、その中でカジュアルウエアについては中国製などの低価格の商品が市場に出回ったことから、数量においては増加傾向にあったこと を書いてきた。また、後段においては地域別支出の傾向を世帯の特徴、気象、収入との相関において、一定の傾向があることを書いた。
個人的には、収入が少なくなったとき、何にお金をより多くかけるかは個々の価値観によって異なるように、地方のしきたり、習慣によっても大きく左右され る面があるだろう。これらは、なかなか統計的アプローチが困難な面がある。
最近の新聞で雇用環境が改善傾向にあるためか、あるデパートの紳士服売場が賑わい始めたという記事を目にした。一方では景況に業種間格差、地域間格差が あり、所得格差も拡大したとも言われている。経済が一層活性化し、家計に余裕が出てきておしゃれにも気を配れるようになり、被服及び履物の支出が増加する ことを願うばかりである。
<終わりに>
家計調査結果から、被服及び履物の支出について、近年の状況を述べてきたが、書いているうちにどんどん気になることが出てくる。総務省統計局毎月発行の 「家計調査通信」にある県の調査員さんが、「家計調査で得られることは無限です。」と書いておられた。同感であるが、時間の関係で分析不足を痛感してい る。
本年は家計調査の拡大調査で5年に1度の全国消費実態調査が実施され、都道府県庁所在都市だけではなく、都道府県レベルの詳細な結果も公表される。景気 転換期にあり、全国の人口が増加する最後の節目の時期の調査ということで、その結果が注目されるところである。
「どうか、皆様「家計調査、全国消費実態調査」にご協力を!」ということで、筆をおきたい。