第4回地域経済調査報告(中部版)の概要について
中部経済産業局 調査課


 中部経済産業局(管内:富山、石川、愛知、岐阜、三重の5県)では、最近の地域経済の動向と産業実態を迅速かつ的確に把握するため、四半期毎に「地域経済に関する調査」を実施しています。この調査は、管内主要企業への個別ヒアリング(今回調査では延べ173社)に基づき、経済動向を定性的な側面から捉えたものです。

 このほど第4回調査の結果を、平成14年2月6日に発表いたしましたので、その概要をご紹介します。
 なお、全文では、個々の調査項目毎の詳細解説と企業コメントが記載されており、中部経済産業局ホームページでご覧になれます。http://www.chubu.meti.go.jp/index2.htm

1.概況
(1)管内経済の現状(平成13年10−12月)

中部地域の経済は、さらに後退している。

業況は、製造業ではIT関連の一部品目に海外需要の動向を受けた動きがみられるものの、輸送機械が内外需の減少から弱含みとなっていることなど、全般的には、さらに減速している。非製造業においても客単価の下落が続くなど減速している。全体としてみるとさらに減速している。

生産活動は、ファインセラミックスの一部IT関連品目では海外の在庫調整に進展がみられるものの、電気機械は需要不振により減少し、また、金属工作機械でも引き続き大幅に減少している。輸送機械は内外需の減少により弱含みとなっている。全体としてみると、他地域に比べ依然水準は高いものの引き続き低下傾向となっている。特に、繊維、陶磁器の地場産業では厳しい状況が続いている。


出所)中部経済産業局、経済産業省
記号の説明:グラフの中の「→」は中部経済産業局による推定(以下に掲載するグラフも同様)


出所)中部経済産業局 資料)北陸電力(株)
注)契約電力、使用電力(対前年同期増減率)は北陸電力の推定値

設備投資は、主力の輸送機械が計画どおりに進捗しているものの、他の業種では、業況の悪化から投資案件の絞り込みや先送りにより、当初計画を下方修正する動きが多くみられ、全体としてみると減少傾向となっている。

民間設備投資
  東海地域 北陸地域 全国
平成12年度
実績
平成13年度
計画
平成12年度
実績
平成13年度
計画
平成12年度
実績
平成13年度
計画
全産業 4.2 ▲ 1.5 15.4 ▲ 6.0 ▲ 0.9 ▲ 5.7
製造業 1.5 8.0 20.5 ▲ 5.8 10.1 ▲ 7.8
非製造業 6.2 8.1 5.1 ▲ 6.5 ▲ 4.4 ▲ 4.9
出所)日本銀行(12月短期経済観測調査)
注)
1.「東海地域」とは岐阜、愛知、三重の3県、「北陸地域」都は富山、石川、福井の3県を指す
2.「北陸地域」の値は、石油、電気・ガスを除く
3.調査対象は、全地域とも本社所在ベース

出所)中部経済産業局、(社)日本工作機械工業会

個人消費は、大型小売店販売が百貨店では年始商戦において動きがあったものの、スーパーの新規出店効果に陰りがみられることから、全体としては、一進一退となっている。一方、乗用車販売が弱含んでいるほか、サービス産業は総じて厳しい状況となっており、全体としては弱含んでいる。なお、消費動向は、高級ブランド品などに動きがみられる一方、客単価は依然低下しており選別消費が進展していることが窺われる。

出所)中部経済産業局、経済産業省

出所)(社)日本自動車販売協会連合会 、(社)全国軽自動車協会

(2)今後の動向(平成14年1−3月)

 今後、IT関連品目を中心に在庫調整は一層進展するものの、アメリカ経済の先行きが未だ不透明であり、国内景気も引き続き悪化していることから、当面、生産は低下傾向が見込まれ、管内経済は引き続き後退するものと見込まれる。こうしたなか雇用や家計部門への一層の波及が懸念される。

2.新規成長15分野の動向
(1)概況

当地域では、以下の分野については、概ね好調が続いている。

新製造技術関連分野は、高度な技術に裏付けられた金属加工分野や金型設計分野が堅調。

バイオテクノロジー分野は、医薬品関係が引き続き堅調。

環境関連分野は、リサイクルブームや建設リサイクル法の制定を背景に積極的に研究開発に取り組むことにより好調。

医療・福祉関連分野は、医療機器(装置)分野で眼科系等で総じて順調。また、介護用品レンタル分野は地域密着型企業が引き続き順調。

ビジネス支援関連分野は、ISO取得、商品検査等の認証業務が好調。警備保障、アウトソーシング業務も堅調。

新エネルギー・省エネルギー関連分野は、太陽光発電設備が既存住宅向けに好調。省エネルギー計測診断コンサルタント事業は、省エネニーズが高く、引き続き堅調。

住宅関連分野は、建て替えの代替としてリフォーム事業が好調。新たな部材、施工による住宅も好調。

国際化関連分野は、米国同時多発テロにより海外出張関係に影響があったものの、通訳・翻訳業務、リローケションサービスは安定して推移。

 一方、以下の分野については、分野内において好不調のばらつきが見られる。

情報通信関連分野のソフト分野は、ソフトウェア業が、生産ライン向け需要は減少しているものの事務部門に対する情報化投資意欲が衰えてないことから全体では依然好調。デジタルコンテンツ制作も、小口Webコンテンツ制作を中心に好調。ハード分野は、半導体、液晶等電子機器部品がパソコン、携帯電話向けの需要が減退していることから低調。

都市環境整備関連分野は、公共事業の低迷から景観材料関連が弱含んでいるものの、建設設計は日本国際博覧会などの大型プロジェクトを控え堅調。

人材関連分野は、人材派遣でマイライン関連の終了により全体的な伸びは頭打ち傾向にあるものの、人材情報提供では一部に動きがあるものの景気後退による影響で採用を手控える動きが広まり大幅悪化。

生活文化関連分野は、総合教育サービスで仕事に直結する講座の需要が引き続き増加しているが、インテリア用品は住宅着工の低迷から厳しい状況。余暇関連もレジャー施設は厳しい状況。

 また、以下の分野については、今後、特定の分野で成長が期待される。

流通・物流関連分野は、「サードパーティ・ロジスティクス(以下、「3PL」という。)」事業で国際物流業務参入企業や大型小売店の物流基地運営業務受託企業が現れるなど市場が拡大。インターネット通販も、顧客層の拡大化を図ることで今後に期待。

航空・宇宙関連分野は、平成14年度以降の航空分野(民需)における米国同時多発テロによる影響が懸念されるが、宇宙分野で2月予定のHーIIAロケット2号機の打上成功による関連需要進展に期待。

海洋関連分野は、マリーナにおいて今春オープンの海洋レクレーション施設の相乗効果に期待。


(2)相談事業

 中小企業総合事業団中小企業・ベンチャー総合支援センター中部では、情報通信、環境、ビジネス支援の各関連分野を中心に資金調達、公的支援制度等に関するを相談を受けているが、平成13年7月以降相談件数は伸びている。




資料:中小企業総合事業団中小企業ベンチャー総合支援センター中部


照会先:中部経済産業局 総務企画部 調査課
TEL:052−951−2723


平成14年3月号