更新日:2023年4月18日

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カモシカの保護と対応

ニホンカモシカ保護の手引き

令和5年度版より電子データで発行することとなりました。

ニホンカモシカ保護の手引き(令和5年度版)(PDF:851KB)

 

カモシカの保護と対応(概要)

以下の記載内容は「ニホンカモシカ保護の手引き」から作成したものです。

カモシカの保護の現状

ニホンカモシカ

ニホンカモシカ(以下「カモシカ」と呼ぶ)は、昭和9年(1934)にその学術的価値が認められ、当時の「史蹟名勝天然記念物保存法」により天然記念物の指定を受けた。しかし、第2次世界大戦による社会の混乱と良質な肉と皮を目的とした密猟によって、昭和20年代にその分布域の縮小と生息頭数の減少がおこったとされている。このため密猟の取り締まりを強化する一方、昭和30年(1955)に現行の「文化財保護法」により特別天然記念物に昇格指定され、富山県においても昭和50年(1975)に県獣に指定され、カモシカ愛護思想の普及を図るなど大切に保護されてきた。これにより最近では、その個体数が増加し、分布域が拡大するなど山麓部周辺や平野部でもカモシカが見られるようになっている。また、山形県、長野県、岐阜県などでは、カモシカの増加によりその生息地に隣接するヒノキの造林地や農地で、カモシカによる食害が増えており、一部では大きな社会問題になっている。なお、本県の造林形態は、スギが主体であることから食害の報告は現在のところ極めて少ない状況にある。一方、カモシカが増え人目にふれることが多くなったことで、ケガや病気のカモシカ、幼獣のカモシカが保護される事例が多くなってきている。

カモシカの特性

分類 ニホンカモシカは、偶蹄目ウシ科ヤギ亜科の動物である。本種は、北海道と中国地方を除いた本州、四国、九州に生息する日本固有の種である。
形態 成獣は一般的に、頭胴長約130cm、尾長約10cm、体高約75cm、体重30~40kg。体色は黒褐色や灰褐色が多いが、灰白色や橙黄色のものまで様々である。雄雌ともに12~15cmくらいの角を有しているが、雄の角は比較的長く先が鋭い。雌の角は太目である。基部に輪があり、年令とともに増加する。輪の節は、毎冬に形成される。歯はウシ、ヤギ等と同じく32本で、上顎の門歯と犬歯を欠いている。眼下腺には組織学的に性差と個体差がみられ、分泌物は個体間のコミュニュケーションの役割があるとされる。また、乳房も4乳頭であることもウシと同じ。性比は1時01分。最高齢の記録は、飼育下のカモシカで推定33才である(立山博物館カモシカ園、クロ、雌、1992年死亡)。
習性 反芻性、草食の動物で、岩場や急傾斜の斜面のある森林に好んで生息している。低木の葉、芽、小枝、花、実、それにササや草木を食べる。主に早朝と夕方に採餌し、座り込んで休息しながら反芻していることが多い(衰弱していると間違えやすい)。人が山の中で仕事をしていると岩角など見晴らしのよい場所に何時間も立ち、じっと見ていることがある(動けなくなっているわけではない)。成獣の行動範囲は定まっており、定着性が強く、同じ場所でよく見られる。木の幹や枝にツノトギや眼下腺からの分泌物をこすりつけるといったマーキングをする。排泄物は、ロールベアリングを思わせるような長円形で一か所にフンを溜める習性がある(1回分のフンは、200~300粒以上のフン塊)
繁殖 発情期は10~12月で、妊娠期間は約7か月、4~6月頃に1仔を産む。通常、単独で行動しており、仔は出生の翌年の春まで母親と行動をともにする。2.5~3才で性的に成熟する。
生息地 昭和48年(1973)、昭和52年(1977)の両年に環境庁が実施した調査では、本州では茨城、千葉、兵庫、中国地方を除く各県に、四国では徳島と高知に、九州では大分、熊本、宮崎等、全国で30都府県で生息が確認されている。全国的な傾向としては東日本、中部地方と紀伊半島に多く、西日本に少ない。本県では、神通川以東の森林帯と県西部の白山山系の山地に生息している。近年、神通川~庄川間の森林や小矢部南部丘陵にも分布が拡散してきた。生息数は、昭和40年(1965)頃から増加しており、低山帯への下降現象が著しい。

引用・参考文献

  • 白山カモシカ保護地域特別調査報告書(平成3・4年度)
  • 北アルプスカモシカ保護地域特別調査報告書(1989・1990年度)
  • 富山県の鳥獣(富山県 1980年度)
  • ニホンカモシカの繁殖等に関する基礎的研究(岐阜大学 1985年)
  • 富山大百科事典(北日本新聞社 1994年)

カモシカが出没したときの対応方法

まず,あわてず,状況を確認する。

  • カモシカは野生の動物ですから,突然あらわれることもあります。
  • 確認するにあたっては以下の点に注意。
    必要以上に接近しない。(パニック時の突進や角によるケガには特に注意)
    カモシカを興奮させるような刺激的な行動を避ける。
    カモシカの逃げ道をふさがない。
対応方法一覧
カモシカの状態 周囲の状況 対応
ア 怪我や病気もなく自力で立っており、元気な場合 a 人家密集地や車等の往来の激しいところに出現した場合
  • カモシカは人を襲わない動物であり、帰巣本能もあるので、山に帰る道筋がわかれば帰って行くと思われる。よって、しばらく様子を見守るのが原則。
  • 人家密集地では、人に直接危害を加えることはほとんどないが、住民が不安や心配をもたないよう、カモシカの特性について説明し、静かに見守ってもらうよう働きかける。
  • 保護(捕獲)は原則として行わないものとするが、交通安全上自力で山へ戻ることが出来ない場合は保護(捕獲)も検討するので当該市町村の担当部局へ連絡して下さい。
  • 交通事故等の恐れがある場合は、警察にも協力を要請する。
  b 畑などの農作物等があるところに出現した場合
  • しばらく、様子を見る。山に帰っていくようであれば、特に人の手を加えることはない。
  • カモシカが畑等に居つくようであれば、石や泥を投げて山へ追いやる。また畑等の周囲に網等を張り、カモシカが中へ入り込まないようにする。
  • 農作物に被害があるようであれば、何がどの程度被害が出たかを確認する。位置や状況を把握して当該市町村の担当部局へ連絡して下さい。
  c 上記以外の場合(付近に自然があるところ、河川敷等)
  • 基本的にはカモシカが山に帰っていくよう見守る。
  • カモシカを刺激したり、必要以上に騒ぎたてないようにする。
  • そのままにしておけば自然と山へ帰りますので,騒がずにその場所を離れて下さい。
  d ダム、堰堤、用水等に落ちたりして動けなくなっている場合
  • 接近すると,より困難な状況になりますので、周囲に人がいれば近づかないよう注意し、速やかに当該市町村の担当部局へ連絡して下さい。
  • 人身に危険な場所は,確認においてもむやみに近づかないこと。
イ 近づいても座ったきりなど,怪我や病気を負っていると思われる場合  
  • 動かさずに速やかに当該市町村の担当部局へ連絡して下さい。
  • 処置は,現地で専門獣医師が行いますので,勝手に鳥獣病院等に持ち込まないで下さい。
ウ 死亡している場合  
  • 検死などの手続きが行われますので,死体をできる限り動かすことなく、速やかに当該市町村教育委員会に連絡して下さい。
エ 子供のカモシカの場合  
  • 山中で幼獣のカモシカを見つけ、親と離れて迷子になっているものと思い、持ち帰る事例があるが、たいがい親が近くにおり、人の接近により警戒して姿を見せない。また、幼獣は一度、保護(捕獲)してしまうと野生復帰が困難になるので注意する必要がある。
  • 幼獣のカモシカには触れずに立ち去ること。すでに収容されてしまった場合は早急に山の収容地点付近で放獣する。
  • 個人的な飼育は、法的な問題もあり困難である。

死亡時の手続き等(参考)

ア 手続きの仕方 市町村教育委員会及び市町村鳥獣行政担当課で対応する。
  • 死亡しているカモシカが銃等で捕獲されたものでないか確認する。(銃及びその他故意に捕獲された可能性のある場合、県教育委員会文化財課、県自然保護課、県農地林務事務所、最寄りの警察署に連絡する。)
  • 滅失届(文化財保護法第33条による)を提出する。〔市町村教育委員会→県文化財課→文化庁〕
イ 死亡個体の処理について
  • データ集積(カモシカの体部等の測定)のため、カモシカ調査員等に連絡する。
  • 学術調査に必要な個体や部位がない場合は、データ、写真等の記録をとった後、埋葬または、焼却する。(場所は各市町村内で適地を選定のこと。)
  • はく製としての利用については、公共施設等での普及啓発のための展示を目的とした場合については、可能である。その場合は、その旨、県文化財課に連絡するとともに、県自然保護課又は県農地林務事務所で適法捕獲等証明書の交付を受けること。

カモシカ担当部局

市町村

文化財行政担当→教育委員会の生涯学習課,社会教育課など

鳥獣保護行政担当→農林課,産業課など

文化財行政担当→生涯学習・文化財室 076(444)3456

鳥獣保護行政担当→自然保護課 076(444)3397

お問い合わせ

所属課室:教育委員会生涯学習・文化財室 

〒930-8501 富山市新総曲輪1-7  県庁南別館4階   

電話番号:076-444-3434

ファックス番号:076-444-4434

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