能 − 善知鳥(うとう)
 
 室町時代に、「立山地獄」の説話を題材とした謡曲「善知鳥」が作られました。(作者は『能本作者註文』などは世阿弥とするが詳細は不明)
 さらにこれを原作に「能 − 善知鳥」が上演され今日に至っています。特に、作中、亡者が形見の袖を渡す場面は、亡き人との再会を象徴する「片柚幽霊譚」として「立山曼荼羅」の地獄の 場面に描かれたほか、各地霊場の伝承の中でも語られました。

 内容を概説しますと、

 立山禅定の僧が猟師の亡霊に出会います。
 この亡霊は、陸奥の外が浜出身の猟師で、生前「善知鳥」を捕まえた報いで立山地獄に堕ち、責め苦を受けているのだといいます。
 猟師が、僧に形見の簑笠・麻衣を託し、地元の妻子に届けてくれるように哀願するので、僧はその後、外が浜に猟師の妻子を訪ね、形見の品を渡します。
 妻子がこれを供養すると、猟師が現れ、生前の猟で犯した業と、地獄での責め苦の様子を見せるのでした。

 以上が「 能 − 善知鳥 」の内容ですが、立山地獄と外が浜といった、当時としては特異な地を舞台に、情愛の世界を、鳥の親子「うとう」・「やすかた」の情愛 の深さと、猟師一家のそれを重ね合わせる手法で巧みに表現しています。