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更新日:2021年3月18日
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浄土路である陽の道を経て、たどり着く世界が天界です。立山曼荼羅では、地獄はその有り様が人間界における日常の延長として、針や剣、釜などによって具体的に描写されていますが、立山山頂にあるとされた浄土の世界は、多くの飛天や菩薩と共に、阿弥陀如来が来迎する光景を描いているのみで、天界の様子は見えません。
このため、古代インドにさかのぼる須弥山思想、禅定者のめざす悟りの世界である色界、無色界と、我々凡夫が到達できるという極楽浄土の世界、そして精神世界を象徴する芸術、この3つの概念、あるいは表現で、想像の世界である天界を構成しています。
また、現実世界との生々しい関係を表現する手段として地界を地上に現わしたのに対して、未知の世界は現実へと引き戻す諸々の要素を排し、現実世界と全く隔絶した空間となるよう、全体を地下に埋めています。
まず須弥山世界の転写として、天界広場、天の廻廊があります。天界広場は須弥山の世界観をモデル化したものであり、ゆるやかに湾曲し下っていく天の廻廊は、須弥山上に住まう天たちを音と香りに転換し、天を想像する世界へと導きます。
仏教の歴史的構図の中における禅定者の世界は、呼吸するようにうつろい、変化する光や、かすかに聞える音などによって天至界、天界という悟りに至る空間に重ねられています。また美しく、きらびやかな極楽浄土の世界を、五色の光彩を放ち浮遊感に浸る、たゆたうような音と香りの空間、天界奏楽洞と天遊桟敷に現しています。
芸術が発するメッセージは、しばしば時の流れを変え、異空間を垣間見せ、新たな認識を与えながら、鑑賞者を想像の世界へ導いてくれます。迷路空問に点在する天界窟は、7人の現代のアーティストや建築家が天界をテーマに創造した世界となっています。コンクリート、金属、木、紙など様々な素材、空間そのものや造形、テキスタイル、書などで表現された世界は、さながら敦煙の石窟のように一窟ごとが観想の場となり、天と我々を新鮮なイメージでつないでくれます。また奏楽洞に置かれた天子天女たちの楽器もまた、天の世界を体験し、想像する芸術の一つです。
天界の空間構成は、光や音、香りを微妙に制御することによって、刺激を和らげ、あるいは消し去り空間を変容しながら、静寂な無の世界に近づけていくようになっています。
天界は、五感を通し人間の内宇宙を押し広げ、観想を誘い、想像を促し、未知なる世界を感得していくことを目的としています。
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