NO. 5

2002 年(平成 14 年) 12 5 曜日北日本新聞掲載

 

「トヤマエビ(上)」 水温管理し種苗生産


10ヶ月続く抱卵


  

 トヤマエビは、一般にボタンエビと呼ばれ、日本海からベーリング海を経てカナダ東海岸近辺まで、北太平洋一縁に分布する冷水性のエビだ。
 すしねたや刺し身として主に利用され、富山湾では水深約200mから350mの海谷斜面付近で、小型底びき網漁業やかごなわ漁業で10トン前後漁獲されている。
 県水産試験場では平成7年から深層水の水産利用が可能になった。水深321mから汲み上げられる深層水は、まさにトヤマエビがすんでいるところの海水である。富山湾のトヤマエビを増やすため、深層水を利用した種苗生産が開始された。
 水産の世界における種苗生産とは「魚介類の生後間もない子供の時期を人間が面倒を見て放流するまで育てること」を意味している。
 トヤマエビは3〜5月の産卵期になると雌と雄が交尾し、受精した卵を雌が腹肢の間に 約8,00020,000粒付着させ、約10ヶ月間抱き続ける。その後、翌年の2月〜4月に幼生が卵からかえり、それを水槽に収容して種苗生産が始まる。幼生を確保するために大量の抱卵親エビが必要になるが、現状は、天然エビを購入して対応している。
 抱卵している親エビは水温約3℃で飼育しているが、幼生は3℃で飼育すると成長しないので、約1012℃の水温で飼育する。
 飼育当初の3月下旬から4月初旬の表層海水は約10℃前後であるため、そのまま飼育に用いるが、4月下旬から水温が上昇し始めるので深層水を表層海水と混ぜて飼育水温を調節している。飼育期間は6月上旬までの約2ヶ月間で、それまでこの水温を維持する。
 飼育エビは、アルテミアという動物プランクトンと配合飼料を餌として与え、この期間で全長約25mm前後に成長する。当試験場では、平成8年からこれまでの各年に平均全長20.229mmの稚エビを1345万尾生産している。 (渡辺孝之)

 


トヤマエビ(雌)の成熟個体(上)と抱卵個体

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