富山県衛生研究所年報 第30号から抜粋
[行政および依頼検査]
感染症,食中毒
2類感染症 :腸管感染症では,赤痢3件,コレラ7件の発生があった.赤痢菌の 血清型はソンネT相(1株), フレキシネリ2(1株),フレキシネリ2b(1株) で, 1株はべトナム・カンボジアへの旅
行者から,残りの2株は海外渡航歴のない患者からの分離であった.コレラ菌7件は
すべてインドへ旅行した同一集団発生由来であった.その内訳はO1 Inaba 5株, O1 Ogawa 2株であった. このうちO1 Ogawa 株とO1 Inaba
株が同一の患者から分離された例が2例あった.
3類(腸管出血性大腸菌)感染症:
平成18年度は感染事例が31 件(117名)で,原因菌の血清型はO157 19件(96 名),O26 10件(13名),O111 1件 (7 名),O63 1件(1名)であった.集団発生事例は7そのうちの3件は家族内感染例であった.また,保育園 における集団発生事例は2件であった.
生 活衛生
食品検査:
7月に清 涼飲料水27件の成分規格試験を行った.すべての検体で大腸菌群陰性であった.また,食品の夏期一斉取締りの一環として,生食用魚介類(刺身等)32検体 について腸炎ビブリオの定性または定量検査を行った.すべての検体が成分規格基準に合致していた.7〜11月に,牛生レバー19検体について,一般生菌
数,大腸菌群数,腸管出血性大腸菌O157・O26・O111,カンピロバクターの検査を行った.腸管出血性大腸菌はすべて陰性であった.カンピロバク ターは9検体が陽性であり,7検体からC.jejuni,2検体からC.coliが分離された.
海水浴場水検査:
生活環境部および富 山市の依頼で海水浴場水(8定点,のべ128検体)の糞便性大腸菌群数測定を行った.いずれも水質が良好な「AA」また は「A」ランクで「適」であった.このうち26検体について腸管出血性大腸菌O157検索を行ったがすべて陰性であった.
水道水源水検査:
「水道におけるクリプトスポリジウム対策の暫定方針」に基づき,富山県内で水道源水として利用される河川水,湧水等43 検体について汚染指標菌(大腸菌と 嫌気性芽胞菌)の検査を行った.指標菌のいずれかが陽性であった9検体についてクリプトスポリジウムおよびジアルジアの検査を行ったところ、いずれからも そのオーシストは 検出されなかった。
腸炎ビブリオ検査:
平成8年度より始 まった通称「VP マリン」事業として,6月から11月にかけて県内5漁港の海水(表層及び海底)の腸炎ビブリオを定期的に調べた.その結果,海水中の腸炎ビブリオ数は, 100mlあたり<3〜2.4×103の範囲であった.
名水調査:
県内で飲用されているいわゆる「名水」について,細菌学的な調査を行なった.
調査は7,10月の2回,採水地点はそれぞれ9か所,計21検体について,嫌気性芽胞菌,生菌数,病原性大腸菌定 性と大腸菌定量を実施した.1か所の名水(採水個所2)が大腸菌定量試験(MPN)93,240であった.嫌気性芽胞菌,病原性大腸菌定性はすべての検体 で陰性であった.
依頼検査:
民間企業から依頼を受けた医薬品について,抗菌試験を実施した.
滑川市から依頼を受け,海洋深層水の一般細菌数および大腸菌定性の検査を18検体,また一般細菌数および病原細菌定性(大腸菌,大腸菌O157,赤痢菌,サルモネラ,腸炎ビブリオ,黄色ブドウ球
菌,セレウス菌,腸球菌,緑膿菌,嫌気性菌)の検査を16検体について行った.一般細菌数検査では,多くが0〜5cfu/mlと少なく,清浄性が保たれて いた.病原細菌定性検査では,一部の採水地点から大腸菌,セレウス菌,緑濃菌,嫌気性菌が検出された.
病原細菌検出情報内10か所の病院と4か所の富山県厚生センター,富山市保健所,衛生研究所における糞便からの病原菌検出数は,1,644株,前年比98.6%であった.最
も多かったのは大腸菌745株で,以下,黄色
ブドウ球菌の530株, カンピロバクター250株,サルモネラ31株,腸炎ビブリオ16株の
順であった.
[調査研究]
サルモネラ
県内の病院,保健所でヒトから分離された菌株の収集解析を
行った.2006年1月〜12月までに当所に送付された菌株は8株であった.この研究を開始してからの26年間で もっとも少なかった.サルモネラ分離菌について血清型別,薬剤感受性試験を実施した.
また,市販鶏肉36検体についてサルモネラ汚染実態調査を行った.その結果,24検体からサルモネラが分離された.
大腸菌
平成18年度に発生した腸管出血性大腸菌O63について,その生化学的性状とベロ毒素遺伝子の解 析を行った.1992年以降富山県で発生した腸管出 血性大腸菌について,代表株378株
についてパルスフィールド電気泳動によるDNAパターンを解析し,データベー ス化を行った.また,平成18年8月 〜9月に発生した保育所を中心とする腸管出血性大腸菌O157集団感染事例について全分離株74株についてパルスフィールド電気泳動による分子疫学的解析を行った.
溶連菌
平成18年に県内2ヶ所の病院で分離された溶連菌を型別した.A群40株では,検出率が高いT型は,順にT1型, T11型,T25型,T4型,T12型,T28型であった.前年と比較して,T1型とT25型が増加し,T6型,T12型が減少していた.B群44株で検
出率が高い型は,順にY(NT6)型,Tb型,I a型,X型,[(JM9)型であった.
腸炎ビブリオ
平成18年6月から11月の期間,県内の5漁港海水についてPCR法と免疫磁気ビーズ法により耐熱性溶血毒素 (TDH)産生性腸炎ビブリオの分布を調べた.その結果,海水100検体のうち,15検体がTDH遺伝子陽性となった.また,TDH産生性腸炎ビブリオ O3:K6を1検体から分離した.
カンピロバクター
平成18年に県内2 か所の病院で分離されたカンピロバクターの収集解析を行った.当所に搬入された菌株は26株で,内訳はC.jejuni 23株,C.coli 3株であった.分離菌について薬剤感受性試験,Penner型別を行った.ま た,市販鶏肉22検体について,カンピロバクター汚染実態調査を行った.その結果,17検体からカンピロバクターが 分離された.
[精度管理]
内 部精度管理:
富山県食品関係試験検査業務管理要綱に示される 精度管理規定に基づき,県内4厚生センター,食肉検査所,富山市保健所および衛生研究所の7機関について,内部精
度管理調査を行った.試料は当所で作製しそれぞれに配布した.調査項目は,牛乳の一般生菌数測定および牛レバー中のEHECO26の検出とした.なお,牛
レバーは,EHECが陰性であることを確認した.EHECO26を接種,E.coli O1を接種,接種菌なしの3検体を各機関に配布した.回答結果は,一般生菌数測定,EHECの検出ともにすべての機関で良好であった.この回答結果につい ては本年報にその詳細を掲載している.今回,EHEC検出の新しい通知が出たことを受けて,SOPを改正するための予備試験としてこの課題を選択した.そ
の結果,PCR法の結果については慎重な対応が必要である事が確認された.
外部精度管理:
前述の精度管理規定に基づき,外部精度管理調査に参加した.
[レファレンス センター事業]
衛生微生物協議会,希少感染症研究事 業の溶連菌感染症の東海・北陸支部レファレンスセンターとして活動した.A群溶連菌のT型 別については,愛知県衛生研究所56株および富山県衛生研究所40株,計96株の結果を報告した.また,東海北陸地区で発生した8例の劇症型溶連菌感染症 例やB群溶連菌44株の型別結果についても報告した.