[行政検査]
カ ドミウ ム汚染地域住民の健康調査(神通川流域住民健康調査)
1次検診
昭和54年度から実施してきた環境省(庁)委託の健康調査方式が,平成9年度から新しい方式に改められた.平成18年 度は,対象者 2,343名中774名が1次検診を受診した.
精密検診
1次検診の結果,尿中β2-マイクログロブリン濃度が5.0r/gCr以上または尿検査で尿蛋白(±)以上の陽性を示したもの140名が 精密 検診の対象となった.精密検診は指定医療機関である富山大学附属病院,富山県立中央病院,富山市民病院の3医療機関で行われ,受診 者112名の 尿,血液について所定の検査を行った.
管理検診
イタイイタイ病要 観察者に対して,経過観察中の管理検診対象者1名全員が受診し,該当する尿および血液検査 を実施した. イタイイタイ病認定申請に伴う検査:申請の あった4名について,該 当する尿および血液検査を実施した.
[調査研究]
骨粗鬆症予防法の確立に関する研究 −骨 粗鬆症予防に効果的な運動についての検討−
骨粗鬆症予防を目的としたこ れまでの調査から運動がその予防に有効であることが明らかとなった。一方、運動以外の日常生活活動も中等度の身体活動であれば生活習慣病予防の効果がある
といわれている。そこで、骨粗鬆症予防に有効な身体活動を明らかにするために、中高齢者について歩行運動の量(歩数)および強度を測定し、骨密度、骨代 謝の生化学指標との関連を検討する。
今年度は、中高齢者の身体活動量の実態を 把握するために、健康教室に参加した中高齢男女について身体活動量の指標として1日平均歩数、速歩時間、活発な身体活動量 を測定した。その結果、いずれの指標も男性に比べ女性のほうが多い傾向を示した。年齢と身体活動量の指標との間には男女ともに関連はなかった。歩数と速歩
時間及び活発な身体活動量との間には高い相関があったが、歩数が10,000歩
以上あるものでも活発な身体活動量が少ないものがみられ、活動強度も含めて身体活動量を評価する必要性があると考えられた。
肥満体質遺伝子と生活習慣病予防に関する疫学的研究
これまで、肥満男性についてアディポ ネクチンを測定したところ、BMIや体脂肪率と負の相関を示し、アディ ポネクチンは肥満(体脂肪の蓄積)により減少することがわかった。 今年度はアディポネクチンのなかで も特に生理活性を有するとされる多量体を測定し、その分画比を求めたところ、分画比はBMI、体 脂肪率のほかインスリン値とも有意な負の相関を示し、多量体測定の有用性が認められた。
環境汚染物質の生体影響に関する研究
有機リン系農薬の曝露指標として, 尿中のジアルキルリン酸のモニタリングを行い,生活環境要因との関連について検討した.30歳代から70歳代の男女193名を対象とし,ジメチルリン酸,ジメ
チルチオリン酸,ジエチルリン酸,ジエチルチオリン酸の4種のアルキルリン酸を測定した.その 結果,すべての検体から1種以上のアルキルリン酸が検出され, これまでの調査と同様にジエチル型よりもジメチル型アルキルリン酸の検出率が高く,濃度レベルも高かった.“農家”で“農作 業あり”の女性では,年間10日以下と少ない作業日数にもかかわらず,“農
作業なし”や“非農家”の女性に比べてジメチル型アルキルリン酸が高い値を示した.また,DDVP製 剤の殺虫剤を使用している者で尿中ジメチルリン酸濃度が高値を示し,環境要因が尿中アルキルリン酸レベルに影響している可能性が示唆された.
中国内蒙古フッ素汚染地域における血中ビタミンD3著高と骨吸収亢進に関する調査研究(文部科学省科学 研究補助金基盤研究B海外学術調査)
これまでフッ素曝露による骨への影響は,
骨芽細胞刺激による骨硬化症(骨過形成)とされてきたが,1996年から2002年の富山大学医学部および中国内蒙古医学
院との共同研究により,飲料水中フッ素汚染がみられた中国・内モンゴル自治区草原地域の中年女性に骨吸収の亢進を観察した.そこで,フッ素曝露が成長期お よび閉経期の骨量と骨代謝へ及ぼす影響を明らかにするため,同地域のフッ素汚染状況を把握し,先に同地域住民にみられた血中活性型ビタミンD3著高と骨吸収亢進・骨量減少の関係を検討 し,そのメカニズムを考察するとともにフッ素摂取量の基準設定への科学的データの提供を目的として平成18年度から20年度の3カ年計画で調査を実施する.
平 成18年度は,9月に研究代表者を含む4名が現地に赴き,閉経および未閉経中高年
女性と成長期女性の対象者の選定など現地の研究協力者と打ち合わせを行った.あわせて血中骨代謝マーカーの測定を依頼する北京大学医学部との打合せを行っ た.調査地域である中国・内モンゴル自治区の草原地域(達茂旗市周辺)では,フッ素濃度が高いタン茶浸出液が常飲されていることが分かり,他の中国茶葉浸
出液について検討を行った.採取した中国茶葉の浸出液中フッ素の濃度は約6割が飲料水の基準である0.8mg/Lを超え,ティーバッグやタン茶類には数mg/Lも含有するものがみられ,お茶飲料からの フッ素摂取量が多いことが示唆された.若年者の骨密度測定のために新たに超音波骨密度計GE Lunar A-1000 InSightを購入し,過去に使用した装置,同A-1000 Expressとの比較を行った.フッ素摂取量を推察す
るための栄養調査項目を追加したアンケートの作成を行った.平成19年度は疫学調査を行う予定である.
カドミウム汚染地域住民健康影響調査(神 通川流域住民健康調査)に関する研究
神通川流域のカドミウム汚染地域において,平 成9年度以降,新方式により行われた住民健康調査の調査データと,昭和60年度から平成8年度までに,昭和51年方式により 環境省(庁)委託事業および富 山県単独事業として行われた住民健康調査データについて,集計・解析し取りまとめている.(環境省カドミウム汚染地域住民健康影響調査検討会にて検討中)
濃縮海洋深層水のスキンケア利用に関する皮膚科学的研究
これまで濃縮海洋深層水を用いた「浮遊 浴」の健康増進効果について調査研究を行ってきたが,濃縮深層水の「浮遊浴」のモデルである「死海」では,乾癬や アトピー性皮膚炎などの療養に利用されている.そこで, 人間の皮膚に構造上の類似点の多い仔豚を使用して濃縮海洋深層水の抗アレルギー・抗炎症効果を検討した.
平成17年度は,「仔豚皮膚を用いた濃縮海洋深層 水成分の皮膚浸透性と抗炎症作用に関する実験的研究」を課題として研究を行った.4週令の仔豚に1-クロロ2,4-ジニトロベンゼン(DNCB)を2回皮内注射し,DNCBを染み込ませた綿を接触させることにより
接触性皮膚炎を惹起させ,塩分濃度15%および30%の濃縮海洋深層水と蒸留水の温水(37℃)に2時間温浴させ,皮膚組織の採取を行い, 組織学的観察およびイオン質量分析装置(SIMS,イオン顕微鏡)測定を行った.そ の結果,組織学的観察では,温浴後の蒸留水群と濃縮海洋深層水群に組織学的な差は認められなかったが、SIMSによる炎症部位のイオン濃度測定では,濃 縮海洋深層水群の表皮および真皮中のNa,K,Mg,Caは蒸留水群に比べて著しく高く,これらの 元素の皮膚浸透性が明らかとなった.
(富山大学, 農業技術センター畜産試験場との共同研究)
アレル ギー診断薬液等の超音波経皮浸透装置の開発と応用(大学連携先端研究推進事業)
ア
レルギー検査は皮膚試験と試験管内試験に大別され,患者の負担が少ない試験管内試験が現在のアレルギー検査の主流となっているが,費用や判定まで要する時 間,採血などの問題がある.本研究では,数種類以上のアレルギー診断薬をそれぞれに独立したパッチ(薬液を染み込ませるパッチが近接して数種類以上点在し
ている)に染み込ませ,これを被験者の皮膚の上に貼り,貼ったパッチの上から超音波振動を加えて短時間でアレルギー診断薬を経皮浸透させる超音波式アレル ギー診断薬経皮浸透装置とアレルギー診断用パッチの開発を目的として研究を実施中である.
平成18年度 は,超音波 薬剤経皮注入装置および振動ジグの試作を行い,モルモット皮膚への色素の浸透実験を行ったが浸透力が弱く浸透しなかった.そこで,振動ジグの改良を行うこ
とにより,滴下した色素がモルモットおよび仔豚皮膚を浸透することを確認した.市販パッチに色素を染込ませて上から超音波装置を使う方法では皮膚への浸透 は弱く,濾紙に染込ませる方法では浸透した.アレルギーテスト(スクラッチテスト)陽性のヒトの皮膚へ,ハウスダストおよびダニアレルゲンを滴下し,超音
波装置を使用する方法で島状の赤斑が生じることを確認した.レーザードップラー血流画像化装置を用いて,上記の島状赤斑の画像解析を行い,陽性判定の方法 として高感度であり,実際に使用できることを確認した.衛生研究所倫理審査委員会(外部委員会)に対して,平成19年度にヒトを対象として実験を行うことについて申請 し,承認を受けた.
(工業技術センター機械電子研究所,富山大学医学部,同工学部との共同研究,平成18年度から19年度の2年計画)