富山県衛生研究所年報 第30号から抜粋


化学部の業務概要


[行政および依頼検査]

食品等の検査
 添加 物及び成分規格等:県内 で生産されたミネラルウォーターの成分規格試験(混濁,沈殿物,ヒ素,鉛,カドミウムおよびスズ),煮干し等魚介乾製品中の酸化防止剤(BHABHT),惣菜等の保存料(安息香酸,ソルビン酸),甘味料(サッカリンナトリウム)及び生めん類等の品質保持剤 (プロピレングリコ−ル)等の52検体(総項目数229)の検査を行ったところ,いずれの検体も規格基準または使用基準に適合していた.

 合成抗菌剤等:食肉検査所から豚肉(脂肪)中の残留動物用医薬品,イベルメクチンの定性確認試験依頼があり,LC/MSで確認試験を行ったところ,イベルメクチンの残留を確認した.

 
残留農薬
  県内産主要農産物の玄米,ねぎ,キャ ベツ等の1127検体について,残留農薬迅速分析法(Y. Saito et al. 2004, J. AOAC Int. 8(), 1356-1357)で有機リン系(フェニトロチオン等),含窒素系(フルトラニル等),ピレスロイド系(ペルメトリン等),有機塩素系(ディルドリン 等)の約94農薬を調査した.玄米2検体及びトマト2検体からフルトラニルが,ぶどう1検体からイプロジオンが,だいこん1検体からメプロニルがそれぞれ 検出された.検出量は基準値の1/10以下であった.  

重金属等 
富山湾産魚介類について,15魚種20検体(カワハギ,アジ等)の総水銀を測定したところ,濃度は0.010.05 ppm(暫定的規制値0.4 ppm)であった.また10魚種10検体のトリブチルスズオキシド,ジブチルスズオキシド,ジフェニルスズオキシド(いずれも規制値なし)を測定したとこ ろ,すべての検体でいずれの化合物も不検出であった(定量限界0.02 ppm).


 
家庭用品検査
  除菌消臭スプレーや ヘアスプレーなどの家庭用洗浄剤,エアロゾル製品10検体について,テトラクロロエチレン,トリクロロエチレンあるいは メタノールの規格試験を,また羊毛製品(衣類)5検体についてディルドリンの試験を行ったところ,いずれの製品からも検出されず,規格基準に適合してい た.

水質検査
 管理目標設定項目:

水道水源の水質監視に伴い,水道原水27検体及 び浄水24検体について,亜硝酸態窒素,アンチモン及びトルエン等13項目(総項目数271)の検査を行った.また農薬類としてシマジン等42項目(総項 目数367)の検査も行った.うち3検体についてウラン(0.0002 0.0005mg/L:目標値0.002mg/L)が,1件についてニッケル(0.001mg/L:目標値0.01mg/L)が, 1件について亜硝酸態窒素(0.007mg/L:目標値0.05mg/L)が検出された.その他の項目はいずれも不検出であった.

要検討項目:水道水源の水質監視に伴う水道原水29検体及び 浄水29検体について,銀など重金属類, スチレンなど揮発性有機化合物,フタル酸ジ(n-ブチル)などフタル酸エステル類,ブロモクロロ酢酸などハロ酢酸類及びトリクロロアセトニトリルなどハロ アセトニトリル類等24項目(総項目数696)の検査を行った.うち6検体についてアセトアルデヒド(0.002 0.005mg/L:目標値なし)が検出された。その他の項目はいずれも不検出であった.

 ゴルフ場使 用農薬:県内におけるゴルフ場周辺の飲用井戸 水について,平成185月(21件)および11月(21件)にゴルフ場使用農薬(シマジ ン等42項目)の検査(総項目数596を行ったところ,うち2件についてシマジン(0.00004 0.0003mg/L:目標値0.003 mg/L)が検出された。その他の井戸水からは農薬は検出されなかった.



温泉分析
 中分析15件(新規 分析3件、再分析7件及び浴槽水5件)を行ったところ,温泉法第2条に適合するものは10件(浴槽水を除く)であり,そのうち6件は療養泉であった.泉質 は,ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉,含鉄(U)ナトリウム−塩化物強塩泉,単純温泉等であった.また温泉資源保護を目的として,平成7年度から温泉密集地域の16源泉(18年度1源泉追加)の主要成分等について,経年変化調査を行っている。昨年度は1源泉 において成分濃度が数倍高くなったが,これは温泉の利用形態の変化(揚湯量の大幅減少)が影響しているものと推定された.

 


[調査研究]


食品中の成分および添加物に関する調査研究
  ビール中に含まれるイソキサントフモール(IX)は,醸造工程においてホップに含まれるキサントフモール(X)が環化した化合物である。最近、腸内細菌や肝臓内代謝酵 素によりIX8-プレニルナリンゲニン(8-PN)に変換されうることが報告された。8-PNは植物最強のエストロゲンともいわれている。そこで,IX の光学分割法を検討し,ビールの分析に適用した.その結果,ビール12検体中のIX濃度は0.151.4ppmであり,いずれもラセミ体であることがわ かった。また,IXの光学異性体は加熱により容易にラセミ化することもわかった.食品等中の残留農薬およびその他の有害物質に関する調 査研究
マイクロウエーブ抽出LC/MSによる有害化合物の分析:マイクロウエーブ装置を食品中の農薬等有機化合物の迅速分析法開発に応用する検討を行った.約70種類の農薬をほうれん草に添加して回収実験を行ったところ,温度やマトリックスによる影響が少ない約50種類で回収率が 60120%であった.現在,試料への応用を検討している.

飲 料水および温泉に関する調査研究
 飲用されている「とやまの名水」の調査:平 成15年度から飲用されている「とやまの名水」の環境保全や衛生管理・飲用対策の基礎資料とするための水質調査を行っている.平成1516年度は水質基 準項目の検査を行った.平成17年度からは,管理目標設定項目22項目(うち農薬類9項目),要検討項目(フタル酸ブチルベンジル等)3項目及び有機塩素 系化合物(PCB,アルドリン,DDT)8項目の計33項目の検査を行っており,平成18年度は名水18箇所について同検査を行った(総項目数 594).検査の結果,うち1箇所についてウラン(0.0003 mg/L:目標値0.002mg/L)が検出された.その他の項目はいずれも不検出であった.平成18年度に調査を行った名水18箇所うち5箇所は平成 18年度に新たに追加選定された名水で,これらについては水質基準項目等の検査(総項目数270)も行った.

日常の検査業務に適する簡便,迅速な多成分一斉分析法の開発
 
キャピラリー 電気泳動法による光学異性体の分析:光学異 性体の新しい分析法として,ホウ酸を中心イオンに用いたキラル配位子交換法を検討した,ジオール構造を有する光学異性体を分離できることを既に報告した. そこで,本法の応用範囲を広げるため,ポリオール構造を有する単糖類の光学分割について検討した.単糖類はイオン性がなく,吸光度検出できないため,1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロンで誘導体化した。その結果、検討した6種類の単糖類のうち,グルコー ス,マンノース及びフコースについてのみ光学分割できた.今後,誘導体化試薬を検討し,単糖類を一斉に光学分割できる分析条件を検討する予定である


[精度管理調査]

 

食品検査の精度管理「富山県食品衛生検査業務管理要綱」の制定(平成1012月)によって,平成11年度から県内の厚生センター等の公立食品衛生検査機関に対して検査水準の維持,向上を目的 とした精度管理調査を実施している.今年度は5機関において,寒天中の保存料(ソルビン酸)の定量試験の調査を実施した.

x−R管理図法で各検査機関の測定値を評価したところ、一 機関の測定値が異常と判定された.その主な原因は前処理操作時の試料の不十分なホモジナイズにあったことが判明した.また,標準作業書(SOP)に従って も異常値が出る可能性も考えられた.経験年数が浅い担当者には,習熟者による補助,SOPへの前処理に関する説明文の補充の必要性が考えられた.なお,問 題点を把握後,再検査を行ったところ,良好な結果が得られ,全ての機関について,「充分管理されている」と判断できる結果が得られた.

水質検査の精度管理「富山県水道水質検査精度管理実施要領」に基づき,平成18年 度は県内の水道水質検査を実施する18機関の参加により,TOCとアルミニウムホ ウについて精度管理調査を実施した.

TOCは 去年に引き続いての実施で県内の水質検査を行う全18機 関が参加した。全機関が島津製作所製全有機体炭素計により,また1機関はセントラル科学製TOC計 による測定も行ったことより19機関として統計処理を行った.今回は試料として濁りのある自然水(射水市薬勝寺池)を用いたため,前処理の有無・種類により機関間のばらつきが大きく,全機関の測定値の平 均値±標準偏差は1.563±0.186mg/Lとなり,室間変動係数が11.9% と10%を上回った.前処理としてろ過を行っている1機関の測定値1.16mg/Lは平均値±2標準 偏差の範囲から外れていた.前処理としてホモジナイザーまたは超音波発生器を用いている5機関 の平均値±2標準偏差は1.744±0.131mg/L,前処理を行っていない13機 関の平均値±2標準偏差は1.525±0.133mg/Lで,両者には有意な差がみられた(p<0.05).河川,湖沼,貯水池など水道原水を測定する場合,このような懸濁物質を含む試料を測定 しなければならない可能性もあるので,今回の結果はその場合の参考になった.

アルミニウム,ホウ素の精度管 理には13機関が参加した試料は超純水に標準原液および硝酸(試料Lにつき10ml)を添加し,アルミニウム0.03mg/ほう素0.3mg/Lとなるように作製した.アルミニウムの測定値の平均値±標準偏差は0.0292±0.0017mg/Lであり,室間変動係数は5.7%,室内変動係数は0.05.5%であった.ほう素の測定値の平均値±標準偏差は0.296±0.012mg/Lであり,室間変動係数は3.9%,室内変動係数は0.03.0%であった.両者ともに機関間・機関 内のばらつきが小さく,報告された検査結果は概ね良好であった.