日本脳炎とは?

 日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスの感染による急性脳炎です。ウイルスはブタの体内で増幅し、蚊が媒介することで人に感染します。
1 臨床症状
  日本脳炎は日本脳炎ウイルスに感染することにより発症しますが、ウイルスに感染しても発症するのは数百人〜千人に一人程度です。多くは症状も出ない不顕性感染で終わり、抵抗力(免疫:抗体)を獲得します。潜伏期は6〜16日間、発病した場合、頭痛を伴う風邪様症候群、無菌性髄膜炎、脳炎など症状は様々です。発病者の死亡率は5〜40%で、特に幼少児や老人では死亡の危険性が大きく、また精神神経学的後遺症は生存者の45〜70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多いです。
2 病原体
 日本脳炎は、フラビウイルス科に属する日本脳炎ウイルスに感染しておこります。
3 感染経路
 日本脳炎はウイルスを持った蚊に吸血されることによって感染しますが、
  • 日本脳炎ウイルスに感染した動物(主としてブタ)の体で増えたウイルスを、蚊が吸血し、その蚊がヒトを刺すことによりヒトに感染します。
  •  ウイルスを媒介する蚊は、熱帯では数種類の蚊が知られていますが、日本では水田等に発生する『ガタアカイエカ』が媒介します。
  •  ヒトの体内で増えるウイルスの量は少ないのでヒトからヒトへの感染はありません。
 特にブタはコガタアカイエカに好かれます。食用に供されるまでの飼育期間が5〜8か月と短いので、免疫のない感受性のあるブタが常時供給されており、血液中のウイルス量が多いことなどから、ブタは一番のウイルスの増幅動物になります。
4 治療・予防方法
 日本脳炎に対する治療薬はありません。感染して症状が現れた時には既にウイルスが脳内に達し、脳細胞が破壊されており、脳細胞の修復はむずかしく全治は困難です。30年前と比較しても死亡例は減少しましたが、全治は依然として3分の1です。
 日本脳炎患者の発生は減少しましたが、日本脳炎ウイルスに感染する機会がなくなったわけではありません。治療が難しいことからウイルス感染の予防が重要です。
 予防は何と言っても蚊に刺されないようにする対策、そして夏場の体力消耗が大きく影響しますので、体調管理を心がけましょう。
5 感染症法における取り扱い
 5類感染症で全数報告。届出基準に合致する日本脳炎の患者及び無症状病原体保有者を診断した医師は、直ちに最寄りの厚生センター ・保健所へ届けて下さい。
(富山県感染症情報センター)