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富山県衛生研究所

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自然毒と化学物質による食中毒について

掲載日:2021.1.25

 細菌、ウイルスの他に自然毒と化学物質が食中毒の原因となることがあり、これらの症状と思わしき事例が発生した際に、検査を行っています。自然毒、化学物質による食中毒は発生件数、患者数こそ少ないものの、致死率が高く、死者数は細菌、ウイルスのそれに匹敵します(資料1)。

自然毒

 自然毒は「動物性」のものと「植物性」のものに分けられます。

 「動物性自然毒」の原因生物としては、魚貝類由来に限定されています(表1)。一般的に、陸上の有毒動物(ヘビ、ハチ、サソリ等)を食品として摂取することにより食中毒が引き起こされることはありません。
 動物性自然毒による食中毒は、年間30件ほど発生しており、その半数以上はフグ毒によるものです。可食できるフグは、『処理等により人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの種類および部位』(リンク)で決められており、都道府県知事等が認めた者及び施設に限ってフグの有毒部位の除去を行うことができます。フグの種類によって可食できる部位は異なるため、素人の判断による調理は絶対にやめましょう。
 また、巻貝による食中毒も年間数件ほど報告されています。エゾバイ科のエゾボラモドキやヒメエゾボラなどの巻貝は、唾液腺中(図1)にはテトラミンという神経性食中毒を起こす貝毒が含まれているものがあります。

表1.動物性自然毒
動物性自然毒
魚類 ・フグ類(フグ毒)
・バラフエダイ、バラハタ 等(シガテラ毒 等)
二枚貝 ・ホタテガイ、ムラサキイガイ 等(麻痺性貝毒、下痢性貝毒 等)
巻貝 ・エゾバイ科巻貝(唾液腺毒)等


 「植物性自然毒」は、有毒なキノコや高等植物(表2)を、食用キノコや食用植物と間違えて誤食することにより中毒症状が生じます。近年では、イヌサフランの葉をギボウシやギョウジャニンニクと誤食する食中毒事例やスイセンの葉をニラと誤食する食中毒事例が報告されています。ジャガイモによる食中毒事例は、年間2件程度です。原因施設の多くが学校であるため、摂食者数と患者数が多くなる傾向にあります。小ぶりなジャガイモや日に当たって皮が緑色になったもの、保管中に芽が出たジャガイモ(図2)は、ソラニンと呼ばれる有毒成分が含まれます。摂食すると、30分から半日程度で嘔吐、下痢、腹痛等の症状がでます。重症になると意識障害や呼吸困難などを呈することもあります。

化学物質

 化学物質による食中毒の多くはヒスタミンによるもので、ヒスタミンを多く蓄積した魚介類やその加工品を喫食することにより中毒症状を発症します。マグロ・サンマ・カツオ・アジ・サバ・イワシ・ブリ、等の赤身魚はヒスチジン(アミノ酸の一種)を多く含み、これらを常温に放置する等の不適切な管理下に置くと、ヒスチジンはヒスタミン生産菌によりヒスタミンとなります。ヒスタミンによる食中毒は、アレルギー様食中毒と呼ばれ、摂食後、30~60分ほどで顔面の紅潮、じんましん、発熱、嘔吐、頭痛などの食物アレルギーに似た症状が現れます。症状は、6~10時間程度で回復することがほとんどで、長くても一日で回復します。

表2.植物性自然毒
植物性自然毒
キノコ ツキヨタケ、クサウラベニタケ、カキシメジ 等
高等植物 ・イヌサフラン、スイセン、チョウセンアサガオ、トリカブト、ジャガイモ 等(アルカロイド)
・アンズ、梅、アーモンド(シアン配糖体)

 その他、農薬など、食品の生産、流通、消費の過程で外部から混入される物質を原因とする事例もあります。こちらも発生件数こそ少ないですが、ひとたび発生すると大規模な事件に至ることが多いです。

 さらに詳しい情報を知りたい方は、厚生労働省の食中毒ホームページへ
  • 厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」
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